can't think anything else
![](//img.mobilerz.net/sozai/1641.gif)
夏日な今日は凄く暑くて、エースとサッチと甲板に出て水遊びをしていた。泳げないエースに集中的に水をぶっかけて遊ぶというイジメ要素たっぷりなそれに、周りは関わらないようにと遠巻きに見ている。
しばらく経って、エースがぶっ倒れてサッチがお菓子の用意をしに行った時に、甲板の端でイゾウさんに手招きされた。自分の恋人にこんな子供っぽい所を見られていたなんて、いつから見ていたんだろう。ちょっとだけ、恥ずかしい。
「いつから見てたんですかっ?」
「最初から」
「えぇっ!声かけてくれれば良かったじゃないですか」
駆け寄って声をかけてみれば、最初から見られていただなんて、もっと行動を慎めば良かった。
「…にしても、びしょ濡れだなァ」
「わ、ごめんなさい、」
確かに、上に着ているTシャツが透けて下の水着が見えるくらいには濡れていて、急いで一歩下がって、Tシャツの裾を絞る。足下に水たまりが出来て、ちょっとはしゃぎすぎたか、と反省した。
「ま、この天気だしすぐ乾くとは思うが、しっかり拭いとけ」
そう言って、きっと用意してくれていたのだろう、肩にかけてあった大きめのタオルを私にふわりと掛けてくれる。頭からフードのようにそれを被って、ふわりとタオルから香って来たお日様の匂いに幸せな気分になった。
「ありがとうございます」
「いや………」
そう言いつつごしごしと優しく私の髪の水分を取ってくれるイゾウさんに、私はドキドキとしていて、されるがままに大人しくイゾウさんの前に立つ。
「やっぱり、」
「え?」
「我慢出来るモンじゃねェな」
ふと手を止めたイゾウさんを疑問に思って顔を上げた時に、イゾウさんの大きな両手越しにふわりとしたタオルが頬に当たって、直後、抵抗する間もなく唇を奪われる。離れたと思ったら、角度を変えて、何度も、何度もキスされる。
「…っはぁッ、」
脳に酸素が上手く回らなくなって来た頃に、ようやくイゾウさんは私を解放した。と、言っても、未だイゾウさんの両手は頬に添えられたままで、顔を背ける事は叶わない。
「イ、イゾさ、」
「涙溜まってらぁ」
「だって、っ、」
真っ昼間の甲板で、みんないるのに、こんな長くキスをして、平気でいられるわけがない。
「はなっ、離してください、恥ずかしいです」
必死にそう訴えてみるけど、それがイゾウさんに届く事はなくて。
「笑ってる顔も好きだが、恥じらっている顔も可愛いぜ」
「………っ!!」
至近距離で目を見てそんな事言われて、一瞬呼吸が止まった。脈が早まって、熱が顔に集まる。だけど、逸らすことが出来ないのがどうしようもなく辛い。
「もっとよく見せてみな?」
そう言って更に顔を近付けてくるイゾウさんに、更に恥ずかしくなって、抵抗の言葉も出ない。涙が瞳に溜まっていく感覚だけが嫌に早く感じられた。
「…1000歩譲って、ミアの笑顔には目を瞑るが、今のこの顔は、俺だけのモンにしとけよ」
至近距離のイゾウさんは私の脳の反応を鈍くさせる効果がある。激しくなる心臓に、イゾウさんへの反応が遅れていると、親指で私の頬をさらりと撫でたイゾウさんはそのまま同じ場所に軽いキスを落として、タオルごと私をぎゅっと抱きしめた。
私馬鹿だし、いまだイゾウさんの行動の意味とか、言葉の意味が上手く理解出来ていないけど、今は羞恥だけが私の脳を支配していて鼓動が治まることがないから、とりあえず意味とかそんなのはあとで部屋に帰った時にでも考えよう。
((大人げねェことしちまったなァ…))
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