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「ロー、コーヒー淹れて来て。」
「……………あ?」



脚を組みながら手元の書物のページをペラリと捲って、ローの方は見もせずにそう言うと、これまた同じように隣に掛けて読書をしていたローは不機嫌そうな声を上げた。



「てめぇで勝手に淹れろ。ついでに俺の分も持ってこい」
「嫌。」
「………あぁ?」
「嫌。耳腐ってんの?早く行って」



またも隣は見ずに、紙の上に印刷されている文字だけを目で追う。ローは読むのを止めたのか、こちらを凝視しているのが雰囲気で伝わって来た。ああ、怒ってる怒ってる。



「ミア、お前、俺が誰だかわかってるよな」
「何?記憶喪失?可哀想。」
「…………、俺は、この船の船長だ」



ふふふ、自分で言っちゃって。可愛いったらありゃしない。



「そうね。船長ね。」
「だったら、お前が淹れて来い」
「どうして?」
「俺が船長だからだ。」
「何その理論。小物ね。」



鼻で笑ってやったら流石に許せなかったのか、ローは私から本を奪い取り、ソファに押し倒した。本が床に落ちた音で、せめて栞を挟ませてくれれば、と願ったけど、そんな事気にも留めていない目の前の恋人はどうやら相当ご立腹らしい。まぁ、それすらも、可愛く見えてしまう私はきっと頭がどうかしてるんだろうけど。



「調子に乗るな」
「思い通りにいかないとすぐ暴力?」
「どっちが上か教えとかねぇとな」



私の上に乗って上機嫌になったのか、ローはニヤリと私を見下ろす。だから私は、少しだけ間を置いて、急にしおらしく目に涙をためて「ごめんなさい」と呟いた。
一瞬、驚いた顔をしたローに隙が出来る。その隙を見逃すわけがない。



「…どっちが上か、ね」



今度は私がにこりと笑ってローを見下ろす。一瞬の隙に、形勢を逆転させたのだ。



「屈辱?船長さん」



ローの眉がぴくりと動いて相当お怒りである事が窺える。
だけどもちろん、力でローに勝つ事なんて出来ないから、すぐにローの上半身にしなだれかかるように身体を寄せ、その先の唇へキスを落とす。



「ねぇロー」
「……んだよ」
「好きだよ」
「あぁ!?」



不機嫌なローは可愛い。もっと怒らせたい。



「いつも冷静なのに私の前で取り乱すローが好き」
「取り乱してねぇ。馬鹿にしてんのか」
「ふふ、私の前だけで隙を見せてくれるローも好き」
「隙じゃねぇ。わざとだ。」
「いちいち言い返してくるローも好き」
「……喧嘩売ってるだろ」
「キスする時のエロいローも好き」
「………」
「胸いっぱいにあるタトゥーも好き」



そう言って、ローの服を胸までゆっくりと捲り上げる。



「………なんだ、抱いて欲しいのか?」



にやにやと下から見上げるロー。
でもね、ロー。私、ローの期待を裏切るのが好きなの。そして裏切られた時のローの顔はもっと好き。



「ううん、コーヒー淹れて来て欲しい」



だから、にっこりと笑顔を作って私はまた冒頭の言葉を述べた。











(…………チッ、今回だけだからな)
(はいはいありがとねー)
(感謝しろ)
(はいはい。あ、ロー。行く前にそこの本拾って)
(あぁ!?自分で拾え)
(アンタが投げたんでしょ?)
(………)
((ああ、怒ってる怒ってる!可愛いなぁもう))






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