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よく頑張りました。





世の乙女達は恋人を前にこんなに緊張するものなのだろうか。
ダイエット大成功の報告をしに来たはずだったのに、何故か目の前にはゆったりと椅子に座って足を組んでいるイゾウさん。そして直立の私。



「痩せたな」



にっこりと満足そうにそう言うイゾウさんは久しぶりすぎて眩しい。故に、緊張する。


イゾウさんの恋人として自分の体型が許せなくなった私は、数ヶ月前に一方的にダイエット宣言をし、その間極力会わないという本当に自分勝手な行動に出た。今思うと、よく捨てられなかったものだと思う。



「それで、もう満足したのかい」
「うん。ご迷惑をお掛け致しました…」



ぺこりと申し訳程度に頭を下げると、笑顔はそのままにイゾウさんは私を側へと手招きした。私は久しぶりのイゾウさんに緊張しつつも、素直にそれに従う。



「頑張ったな」
「えっ」



よしよし、と頭を撫でてくれたイゾウさんに、心臓が飛び跳ねた。



「褒美は何がいいんだ?」
「へっ!??」



さっきよりもビックリして、今度は声が裏返った。心臓はバクバクと跳ね続けている。



「くっ、くれるの?ご褒美…っ、」
「いらねェならいいが…」
「だだっ、だって、私凄く自分勝手にいきなり会わなくなったりしたし、」
「まァ、確かに最初は腹立ったが…」



………。
腹立ったって……、。
やっぱり、怒ってたんだ……。

イゾウさんから言われた言葉に、内心ちょっとだけ焦る。
でも、そんな焦りさえ吹き飛ばしてくれるような優しい顔で、イゾウさんは言葉を続けた。



「ミアは何で急にダイエットしようなんて思ったんだい」
「それは、……イゾウさんに、……、」
「俺に?」
「…えーと、………可愛く見てもらいたいというか、恥をかかせたくないというか、なんというか、その……」



ごにょごにょと続かない言葉を誤摩化す。



「…つまりは俺のためってこったろ?」
「まぁ、かなり自分勝手だけど、そうです…、」
「じゃあ、俺の為に頑張ったミアに褒美を与えるってのは、理にかなってると思うが?」



口の端を吊上げてそう聞いてくるイゾウさんに、心と心臓が一緒に爆発するんじゃないかと思った。
どうしよう、すごく嬉しい。これが、素直にイゾウさんの優しさが嬉しいからなのか、久しぶりすぎる大好きな人ということで効果が相乗されているからかは分からないけど、ここ数ヶ月なかったドキドキに、頭も身体も心も全部おかしくなってしまいそうだ。
体温が上がった身体に、頬に集まる熱で、目頭がじわじわとしてくる。



「まァ、なけりゃあそれでいいが…」
「ああああるっ、ありますっっ!!」



嬉しくて、この感情に心がついて行くので精一杯で、急いでイゾウさんの言葉に答えた。
思わず大きな声を出してしまった私をイゾウさんはおかしそうに笑って、私の頬はもっと熱くなる。



「じゃあ、言ってみな?」
「えと、えっと、……っ!!」



だけどこんな展開は予想していなかったから、すぐに出てくるものなんてなくて。
でも、目の前のイゾウさんを見ていたら、私は自然と両手を前に差し出していた。



「………ぎゅ、って、して、ほしい、な」



恥ずかしすぎて、俯き気味に目をきゅっと瞑って訴える。
イゾウさんの反応なんて、見る余裕なんてない。


だって久しぶりなんだもん。
イゾウさんにぎゅってして欲しかったんだもん。


そんな言葉を頭の中で並べ立てて、今自分がした行動を必死に肯定する。恥ずかしさと身体の熱さでぶっ倒れてしまいそうになるけど、急にふっと息を漏らすような笑い声が聞こえてそちらに意識を持っていかれた。と思ったら、その直後にひんやりとした布でふわりと身体を包まれる。



「………!」



それがイゾウさんの着ている着物だって気付くのに数秒。そして着物の隙間からのぞいていたイゾウさんの胸板に自分の額が当たっていたのに気付くのにもう数秒。



「こんな褒美でいいならいつでもくれてやるぜ」



耳元で聞こえた低い声に、あわあわと声にならない声を出し、またイゾウさんに笑われてしまった。





少し落ち着くと、ぎゅうと背中に回る大きな腕に愛しさがどんどんと込上げてきて、私も負けじとイゾウさんの広い背中に手を回した。













(………(キュンキュン))
(………(さわさわ))
(………(……ん、?))
(………確かに痩せたな(にや))
(ちょっ……!!!どこさわってんの!?離してーっ!!(じたばた))
(離すわけねぇじゃねェか。お前さんたっての願いだぜ?(爽にこ))
((痩せたけど触っていいとは言ってないー!!!))





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