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夏の決意。





別にエースのようにムキムキになりたいわけじゃないけど、あんな風にどんだけ食べても太らない身体になりたいとは思う。
だからここ一週間、エースにくっついて全く一緒の生活をしてみた。
ちなみに邪な気持ちがあってのエースチョイスかと聞かれると、まぁ、否定はしない。



「エース、たくさん食べたね」
「おう!本当はまだまだいけるけどな!」
「次は何するの?」
「昼寝!」



大きく手を広げて身体をぐぐっと伸ばしたエースは甲板へと歩き出す。
この1週間で大体のエースの行動は掴めた。
基本、朝いっぱい食べて、晴れていたら甲板で昼寝して、お昼もたっぷり食べて、その後は隊の子たちと遊んだり勝負したり。そして夜もたっぷり食べて、よく寝る。

これだけしててよく太らないものだ。
でも、目の前に太らないと実証されている例があるのだから、エースと同じだけ食べて、同じだけ運動してれば太る事はきっとない。…と、思っていたんだけど。



「おー、いい天気」



笑顔満点でそう言ったエースは、甲板の真ん中に大の字で寝転んだ。



「真ん中ですか」
「気持ちいいぜ」
「焼けそう」
「おれは健康的な色の女の方が好きだ」
「なにそれどういう意味?」
「なーいしょ」



なんだそれ。
エースといると調子が狂う。


まぁ、それとこれとは全く話が繋がっていないのだけど、実を言うと、この1週間で私の体重は2キロプラスしてしまっていた。
だから、今日でエースの追っかけも止めようと思ってたのに。



「ねぇエース」



今日で最後、と思いながら、エースの隣にごろりと寝転ぶ。
早くもじりじりと熱で攻撃してくる太陽に肌が悲鳴を上げ始めた。



「なんだ?」
「私がエースのまねっこしてるの何でか知ってるよね」
「ダイエット」
「そう。エースあんなに食べてんのに全然太らないからさ。同じ事したら私も太らないかも、なんて考えたわけ」



隣でぷくくと声を押し殺したような笑いが聞こえた。と同時に、小声でばかだなー、なんて聞こえる。
ちゃんと聞こえてるんだぞ、エースのばかやろう。



「でもさー。2キロ太ったんだけど」
「どんまい」
「グサッ。責任取って」
「なんでだよ。おれのせいじゃねぇし」



にししと笑って、くるりと身体を半分起こし、肩肘をついて自身の頭をそれに乗せたエースが私を見下ろした。
太陽が背になっていて、丁度私の顔に影がかかる。いい日陰が出来た。



「エースのせいだよ」
「なんで」
「同じ事してるのにエースは太んなくて私は太るって、おかしいよ」
「おかしくねぇ」
「なんでよ」
「そりゃ、元々ついてる筋肉が違うからな」
「笑顔で爽やかに言うな」
「ははっ、わり」
「エースみたいにムキムキになってやろうか」
「やめろ」



むぅ、と唇を尖らせる。
ダイエット成功出来たら、どうしてもエースに聞いて欲しい事があった。
だから、目標体重に向けて頑張ろうって思ったのに。まさか増えることになるとは。



「ま、1週間おれとほぼ同じ量食ってて2キロだけって、マシな方だと思うぜ」
「嬉しくなーい」
「んなむくれるなよ。もっと太って見えるぜ」
「……………」



出そうになる溜息を飲み込んだ。
何が嬉しくて、エースにこんな言葉を言われなければならないんだろう。


溜息は吐いちゃダメだ。
それを痩せるって決意に変えなくちゃ。



私はぐっと出かかった溜息を飲み込んで、それを言葉にかえてエースにぶつけた。



「あのさエース」
「おう」



相変わらず日陰を作ってくれているエースが余裕の顔で私を見下ろす。



「私が痩せたら、エースに伝えたい事があるんだけど。」






ぜったい。
ぜーったい、振り向かせてみせるから!待ってろよ、エース!!




 


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