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本末転倒だよね、って話。





「ダイエット?」
「うん。そう。」
「ふーん。飯でどうにかしようってことか」
「そうそう」
「で、俺ね」
「うん。そう。ノーシュガーノーライフの私にとって、これはサッチの協力なしには成功しないの」



ぐぐっと顔をサッチに近付けて力説する。
他力本願、万歳。



「サッチのその魔法の手で、食べても太らないごはんを!」
「太りにくいのなら出来っけど、ミアの嫌いな物ばっかだぞ」
「例えば?」
「ノーシュガー」



にやっと笑ったサッチに、くぅ、と唇を噛む。



「ま、砂糖なしでも甘くは出来るけど、基本野菜と果物中心な」
「お菓子は?」
「論外。間食なし」
「じゃあ、お肉は?」
「こってり系は禁止。」
「……じゃあ、量増やして食べてもいい?」
「野菜のみ可」



と、確認という名の無謀なやり取りをして、サッチは私のダイエットに食事制限という形で協力してくれる事になった。
でもその条件っていうのが、一緒に食事を作る事。
自分が食べている物を把握する事からダイエットは始まるらしい。



「………はぁ」



サッチに気付かれないように小さく息を吐いて、たまねぎを鍋の中でぐるぐると回す。
なぜ私が料理なんてしなければならないのだろうか。
いや、理由なんてわかってる。それがサッチの協力を得る条件なんだから仕方ない。
でも慣れない料理は私にとって凄く大変で。本当は食べる専門でいたい。



「サッチ、これまだ?もうよくない?」
「んー。まだ。」
「もう結構炒めてますけど」
「ミアが食べるモンだから、ミアがそれでいいならいいけど…。もっと火を通した方が甘くなるぜ」
「マジで」
「マジマジ」
「じゃあ、もちょっとまぜてる…。」
「おう。…ミア、ほい」
「なに」
「味見」
「お、………んんっ!」
「美味い?」
「美味い!めちゃうま!」



ふふん、と調子良さそうに私を見て、サッチは今日の皆の夕食になるであろうスープの鍋におたまをつっこんでぐるぐるとかき混ぜ始めた。
あ、鼻歌まで歌い始めてしまった。まぁ、凄く美味しかったから嬉しくなるのもわかるけど。



そのまましばらくくるくると手元のたまねぎを焦げないようにまぜていると、いそいそと隣に寄って来たサッチに気付く。
鍋を気にしながらもサッチの方を向くと、さっきと同じように「味見」と言ってスプーンを差し出して来た。
さっきの味見も美味しかったし、それに何よりたった一口だし、と、私はそれを何の抵抗もなくはむとくわえる。



「……おいしい」
「だろ」
「うん、げろうま!」



な、なになにホントなんなの…!?
この後からじわじわとくるジューシーな塊!
私は野菜たっぷりのごはんなのに、皆はあんな美味しいものを食べるのか…。


………。



「サッチ」
「なに?」
「さっきの、もっかい味見してあげる」
「いやもう食っただろ」
「でも熱すぎてよく味わかんなかったし。念のため、ね?」
「仕方ねぇな。ほい」
「ん。」
「どう?」
「………美味しい」



にへら、と顔を緩ませる。
なんでサッチはこんなに美味しくごはんを作れるんだろう。本当に魔法の手だ。この手に肖って私も早くダイエットを成功させて好きな物を食べれるようになりたい。



「んじゃ、こっちも味見」
「え、わーい」



そんな事を思ってたら、別の皿からクリーム色のソースがてろりとついたお肉と思わしきものをサッチがすくいとり、先程と同じようにスプーンに乗せて差し出す。
それを、釣り針に食いつく魚のように口に含んだ。考えるよりも早く身体が動く。条件反射というやつだ。



「うまっ!」
「ふっふーん。俺に作れないものはない」
「うわ、ちょードヤ顔。うざ!」
「そんなこと言ってるミアにはデザートの味見はさせてあげません」
「うそですサッチかっこいー!」
「よし、食え」
「うまーーー!!」



意外と、サッチと料理をするのも悪くないかもしれない。












(ぎゃーーーーー!!!!)
(どうしたミア!?)
(体重増えてるんですけどー!??どういうことサッチ!!?)
(俺!?いやいやいやお前、間食とかしてんじゃねぇの!?)
(んなわけないでしょ!ちゃんと食べる事に関してはサッチの言う事守ってるよ!)
(じゃあ何で増量してんだよ!?)
(それが分からないか、ら………)
(……あ…………)
((………味見か……))
(ひとくちの脅威………)
(めんぼくない………)







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