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ぷるぷるぷる。ぷるぷるぷる。……がちゃ。
「も、もしもし。サボ?」
『おー。ミア。一昨日ぶり』
ぱっと周りが明るく照らされるような声が聞こえる。
大好きな、サボの声。
『どうした?なんか元気ねぇな』
「うーん。やっぱサボにはバレちゃうんだね」
『俺に隠し事出来るなんて思うなよ』
軽く笑ったサボはそう言うと、再度どうしたんだ?と聞いて来た。
私とサボは遠距離恋愛というやつで。
海賊同士ならまだしも、海賊と革命軍(しかも幹部)での恋愛。
まぁ、それなりに色々大変で。寂しい思いもするわけで。
だけどサボは忙しいのにも関わらず定期的に会いに来てくれるから、比較的何の問題もなく私たちの関係は続いている。
だけどさ。
気付いたら増えていた体重。
サボが来るのは来月。というか、もう1ヶ月を切っている。
「うーん…。なんてゆうか、」
『なんだよ、歯切れ悪ィな』
「えーと、うーーん……」
『なんだ?我慢出来なくてもう会いたくなったか?』
「え!?いや全っ然!!」
『即答かよ!?』
だって、元の体重に戻せるかわかんないんだもん…!!
こんな子豚のような私、見せられるわけない。
遠距離だからって、油断していた。なんて、言い訳にだってならない。
だからマルコにも相談したのに、全然役に立たないしあのパイナップル野郎。
『…で?結局なんなんだ?』
「うー…じつは、」
『浮気?』
「違うよ!」
『ハハッ。じゃあ何だよ?』
「…ふ、」
『ふ?』
“太っちゃった”
たった一言なのに、言い出し辛い。
本当はサボにどうやって減量しよう、なんて呑気に相談するはずだったのに、私ってこんなに乙女だっただろうか。
……というか、これって、もしかして私が言わなければ、…私がめちゃくちゃ頑張って1ヶ月以内に体重戻せれば、いいだけの話、じゃないのか…?
そう一瞬で思い直して、元気よく“何でもない!”とサボに告げようとしたけど、その言葉を空気に乗せる前に、それはサボの声によってかき消された。
『ま、なんでもいいか。俺来週そっち行くし』
「……………は?」
ちょっと待ってお兄さん。今、なんて?
「ごめん、今何て言った?」
『だから、俺来週お前に会いに行くから』
手元のでんでん虫がにやにやと笑う。
もう、嫌な予感しかしない。
「……むり。絶対嫌。ってか聞いてない」
『だって言ってねぇし。つーかそれ会いたくねぇってこと?』
「え、い、いや、そういうわけじゃなくて、」
『じゃあ行ってもいいだろ?』
「そ、それは、だめっ!てか、来月って言ってたじゃん!」
『でも俺がミアに会いたくなった』
う、………そんな言われると、きゅんとしてしまう。
でも来週なんて急すぎる。
『ミアは俺に会いたくねぇ?』
「会い、たい、けど。………来週は、無理」
『………ふーん』
少し声のトーンを落としたサボは考え込むような声を出した後、黙り込んだ。若干空気が悪くなってしまった中、私も押し黙る。
『…でも』
しばらくしてその空気を断ち切ったサボは、でんでん虫の顔をにやりとさせた。
『来週も来月も、そんなに変わんねぇんじゃねぇ?』
「へ?」
『体重』
「え!!?」
サボの発言に思わず声を荒げる。
なんで、サボが、知って、???
「サ、サボ、なんで…」
『ん?エースに聞いた』
あんの能天気野郎〜〜〜〜〜!!!!
あとでギッチギチにシメてやる、と心に誓って、受話器を握りなおした。
「そ、そういう理由だから、来週は、ダメ!」
『ふーん……。わかった。じゃあ、2週間後な』
「え!?それも、ちょっと、急というか……、」
『じゃあいつ?俺そんなに我慢出来ねぇし』
「えーと、じゃあ、来月までには痩せるから…」
『へぇー。来月まで?』
「う……うん。」
『言ったな?』
「え!?…………は、い」
でんでん虫がニィと笑う。
ああ、もう。ホントに嫌な予感しかしないよ。
『じゃ、来月行く。んで、そん時ミアの写真撮るから』
「え、無理それダメ!!」
『いやだ。ぜってぇ撮る。どんな姿であれ、撮る』
「鬼!絶対嫌だからね!」
『来月までに痩せるっつったんだから問題ねぇだろ?』
言ったけど…!
にやにやと笑うでんでん虫が憎い。
強制的にでも痩せなければ、やると言ったらサボはやるのだ。
だったらすぐにでも何かしないと。物的証拠を残させるわけにはいかない。
ああ。早くも溜息が出そう。
今日から1ヶ月は地獄となりそうだ。
(『わ、わたし頑張るからね!!』)
(おう、頑張れ〜)
(『また電話する!じゃあね、サボ!おやすみっ』)
(おう、おやすみ。頑張るのはいいがあんま無理すんなよ)
(『はーい』)
((がちゃ。))
((………なーんて、実はもうエースに写真送ってもらってるんだけどな(にやにや)))
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