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ちゃんとするよ、明日から!





「まーるーこー!!!!」



ばたばたと無駄に大きな音を立ててミアが俺の部屋のドアを開けた。
俺は書類に目を通したまま、音がした方に目を向けることもしない。



「ねぇねぇマルコ!」
「なんだよい」
「相談あるんだけど!」



切羽詰まったような声色だが、大概がくだらない事なので、適当に返事をする。
こっちは書類が溜まっていてイライラしているのだ。さっさと出て行って欲しいと言うのが本音だ。



「あのねマルコ」
「だから、なんだよい」
「わたし、太ったの…!」



悲痛な声でそう訴えるが、正直な所、今更、だ。



「んなこたァ知ってる」
「え”!?」
「食い過ぎなんだよい。この糖尿予備軍が」
「ひどい…!」



泣き真似なんざ痛くも痒くもねぇ。
先程と変わらずミアの方など目もくれずに、確認し終わった書類を横に置き、また別の書類を目の前に持ってくる。



「…で?」
「で、って……」
「今更痩せたいなんて言って笑わせんじゃねぇぞ?」
「え、痩せたいんだけど…」
「ハッ」



思わず、間髪入れずに鼻で笑ってしまった。



「マ、マルコひどい…」
「馬鹿だろ。甘ぇんだよい」
「そ、そんなのやってみなきゃわかんないじゃん……」
「お前、自分の性格言ってみろよい」
「え?うーん。可愛くて、愛想よくて、皆に…」
「ハッ」



馬鹿にしたように、というか思いっきり馬鹿にしてもう一度鼻で笑った。
そんな俺の反応に、ミアは心底傷ついたというように口を噤む。

…あ。書いた文字が曲がっちまった。めんどくせぇ。



「大体な、お前は後先考えずに食い過ぎだ」
「美味しいとつい、食べちゃ」
「言い訳すんな」
「ご、めんなさい……」



さっきまでの元気はどこへやら。
しゅんとした声は、俺の次の言葉を待つ。だが、ここで優しくしてもこいつのためにならねぇことは確実だ。



「めんどくさがりで何をするにも続かねぇ、お前が」
「う、」
「どうやって」
「うぅ、」
「痩せるってんだよい?」
「そ、それは…」
「おまけに甘い物には目がねぇよな」
「…………、」



肯定はイエス。



「口だけなとこも結構あるしよい」



ついには声も聞こえなくなった。
俺の声と書類の掠れる音だけが響く。



「エースみたいに消費するなら食いもんもまぁエネルギーにかわるわけだし、もったいねぇとも思わねぇが」
「……」
「どっかの誰かさんみたいに蓄積するだけじゃ食費の無駄だな」
「………」
「あ、蓄積じゃねぇか。エネルギーじゃねぇけど、ちゃんと脂肪にかえてるもんな」



にやりと笑いながらこの部屋に入って一度も見なかったミアの方に顔を向ける。
確かに、丸くなってるな…。



「痩せる痩せる言ってるだけじゃ痩せねぇぜ」
「わかって、るよ、…そんなこと」



今にも泣きそうだが、言われた事が屈辱なのか、キッと俺を睨みつける。
まぁ俺は正論しか言ってねぇから、こいつも言い返せねぇんだろうが。



「で?具体的にどうやって痩せるんだ?」
「そっ、それを相談しようと思ったんでしょ…!」



へぇ、とまたにやりと笑ってみせると、涙を堪えたミアが顔を真っ赤にして恨めしそうに俺を見た。



「もう、いい!マルコには相談しない!」
「そうかい。じゃあ次に会うときは豚になってるかもな」
「……!ならない!ちゃんとダイエットするもん!」
「今から走り込みでもするのか?」
「明日から!マルコのばか!」



そう捨て台詞を吐いて、乱暴にドアを閉めて出て行く。
本当にあの調子で痩せる事が出来るのか。むしろ、逆にどんどん太って行きそうで少しだけアイツの行く末が心配になった。







(つーか明日からって時点で終わってんじゃねぇかい)







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