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エースと小さくなった少女【前】





「ま、小さい頃はな。可愛気があったもんだが…」
「何を馬鹿な事を。今だって十分可愛いだろう」
「でもま、あの天使の頃と比べるとなぁ。1日でいいから戻ってくれないかねぇ」
「無茶言ってんじゃねェよ。気持ちはわからなくもねぇがな。」



マルコ、ビスタ、サッチ、イゾウが談笑している横で、むすっと楽しくなさそうな顔を隠そうともしない俺は、…そうだ、コイツらが羨ましいのだ。
さっきからミアが小さかった時の話をしているけど、俺は小さい時のミアなんて知らねぇし、最初は聞いてて楽しかったけどだんだん面白くなくなってきた。



だから、そんな奴らの輪を抜けてミアに会いに行ったのは間違いなんかじゃなくて。
俺だけ知らない過去が面白くなくて、随分前に行った島で怪しい老婆にもらった薬を悪戯感覚で菓子に混ぜてミアに飲ませちまったのは、俺のせいなんかじゃない、と、思いたい。



「………おにいちゃん、だれ?」
「……………え?」



だってまさか本当に効くとは思ってなかったんだ。
なんつーか、気晴らしっつーか、そんな感覚で飲ませたわけで。


老婆からもらったあの薬は、ただの若返りの薬、だったはず。
というか、その薬さえ、効果はないものだと思っていた。だから、ちょっとした悪戯と気休めに、って思っただけだったのに。
なのに、薬を飲んでするすると身体が小さくなってしまった目の前のミアは、本当に子供に戻ってしまって。そしてどうやら記憶までなくなってしまったらしい。



「……え、と。……ミア、だよな?」
「?うん、そうだよ!おにいちゃん、わたしのこと知ってるの?」



くるんとした瞳を細めて、にっこりと無邪気に笑うミアは、俺の知っているあのミアと一緒で。やっぱり目の前の女の子が俺の知ってるミアなんだと再確認する。

少し大きくなって肩からずれたシャツを不思議そうになおして、もう一度ミアは俺を見上げた。俺の知らない過去のミアが笑いかける。
それが無性に嬉しくなって、俺は満面の笑顔を向けて、ミアと目線が会うように腰を落とした。



「俺、エースってんだ!よろしくな!」
「!うっ、うん!わたし、ミア。よろしくね!」



再びにっこりと笑ったミアは、マルコ達の話通り、なんつーか今のあの狡賢さが全く見えなくて、本当に天使みたいだと思った。



「ミアは、この船に乗ってどのくらい経つんだ?」
「んー……。たくさん!いっつも乗ってるよ。」



少し考えてからそう自信ありげに言うミアに、ついふっと笑っちまった。



「そうか、たくさんか!」



よしよしと頭を撫でてやると嬉そうに目を細める。
正直今のミアじゃ、こんな、白意外この世に存在しないんじゃないかと言うくらい眩しい天使のような姿なんて考えられなくて、この素直さに鼓動が少しだけ早まった。別に、変な意味じゃなくて、単に慣れてねぇからだけど。




小さいミアが可愛くて、ついつい話し込んじまって、気付けば結構な時間が経っていた。当のミアもどうやらお喋りが好きみたいだ。
だけどそれは次のミアの不安そうな言葉で終止符を打つ。



「ねぇ、エース…」
「ん?どーした?」
「あ、あのね。ここ、モビーだよね?」
「なに言ってんだ?そうに決まってるだろ?」
「う、うん。……でもなんか少しちがう気がしたの」



……あ。そうか。ミアにとっちゃ、今のモビーは少し古く見えるし、ミアが小さかった頃と比べると、色々と変わってる事もあるもんな。

そう思って、気の聞いた言葉でもかけなければと、ない脳みそをフル回転させた所で、今度はミアの言葉に思考が一瞬停止した。



「ねぇ、えーす。……マルコは?」
「………ま、るこ?」



うん、と消え入りそうな声で返事をし、涙目で俺を見上げる。



「お、俺じゃ、だめか…?」



何言ってるんだ俺は。
小さいコイツにとっては、マルコとかビスタがいつも一緒にいてくれて。だから今少しだけ変わっちまったモビーに不安になって、いつも一緒にいてくれるマルコに会いたい、って、そう言ってるだけなのに。

馬鹿なことを聞いてしまった、と思ったけど、口から出てしまったものは消す事は出来ない。



「……………まるこにあいたい」



消す事の出来なかった俺の言葉をふるふると首を振る事で否定して、今にも泣きそうな顔でそう訴えたミアに何故か心がキリリと痛む。



なんだよ。
俺がいても、結局はアイツらかよ。



そんな面白くない思いが渦巻いて、だけどこんなかっこ悪ィ俺をミアに見せたくもなかったから、俺は精一杯の笑顔でミアの言葉に応えた。













(じゃ、俺と一緒にマルコに会いに行くか!)
(ほんと!?エースありがとう!!)
(おー。何かする事あるって言ってたから、まだ隊長室にいると思うぜ(にか!))
(たいちょうしつ…?たいちょーさんがみんなでお話し合いするところ?)
(おう。知ってんのか?)
(知ってるけど、マルコ、そこにはいないよ?)
(ん?なんでだ?)
(マルコ、たいちょーじゃないから、そのお部屋入れないよ?)
(ブフッ……!!(マジでか!))
(??エースどうしたの?)
(いや、なんでもない。でも今は隊長の俺が許可したからマルコもあの部屋に入れんだよ(ぷくく))
(えっ!エースたいちょうさんなの!?すごぉーいっ!!(キラキラ))
(おう!俺も隊長だぜ!かっこいいだろ!)
(うん!かっこいい!マルコよりもえらいんだねっ!(そんけいっ!))
((やべぇ、面白ぇ!!))






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