あまりにも酷いとさ。
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「よく食べるね」
「だってめちゃくちゃ美味しいよ?ハルタも食べてみなよ」
ん、とフォークに乗せたシュガーたっぷりのショートケーキをハルタの前へ差し出す。
「僕はいいよ。ミアが全部食べて」
「にひひ、ありがとう」
ハルタは優しいなぁ、と一度差し出した手を引いて、フォークの上に乗っている白いふわふわのクリームと真っ赤なストロベリーを自分の口の中に放り込んだ。
口の中にとろけるような甘い味が広がって、自然と頬が緩む。
ああ、幸せってこういうことを言うんだな。
なんて、そんなことを思う。
大好きな甘いものを食べて、大好きな人が隣で笑ってくれていて。
にこにこと笑顔がとまらない。
だからなのかは分からないけど。
この後訪れる地獄に私は全くと言っていいほど危機感を持っていなかった。
「ミア、すごく幸せそうだね」
「うん!ハルタと一緒にケーキ食べれてすごく幸せ!」
「僕も、ミアが幸せそうにしてるのは見てて嬉しいよ」
「えへへ」
ハルタの言葉が嬉しくて、ふわふわのクリームをフォークと一緒に口に入れながら照れ笑う。
「でもさ」
ああ、神様。
確かに私はここ最近、幸せすぎて堕落した生活を送っていました。
「これでケーキとか、甘いもの食べるの何日目かな?」
「え?えーと、………そういえば、結構毎日食べてるね」
「だよね」
私の言葉にハルタはにこりと笑う。
でもさっきまでの笑顔とは違って、目が笑っていない。
「しかも、デザートレベルじゃなくて、毎日3食に加えて、間食の数が尋常じゃないこと、気付いてる?」
「う、……だって美味しいんだもん。ハルタも付き合ってくれてるじゃん…」
「へぇ。人にせいにするんだ?」
「そ、そういうわけじゃないけど、」
「じゃあなに?」
笑顔はそのままで聞いてくる。
確かに、美味しいのもあるけど、ハルタと一緒にお茶してお話出来るのが嬉しかったのも事実。
「一応聞くけどさ」
「な、なに」
「今、体重何キロ?」
「………!!」
そ、そんな面と向かって聞くなんて…!!
いくら彼氏でも教えられない。
「そんなの、チェックしてないからわからないよ…、」
「ふーん。まぁ、明らかに見た目からしてヤバいことには変わりないけど」
「え!?」
「気付いてなかったなんて馬鹿なこと言わないよね」
「う…!!」
気付いてなかったとは、言わないけど。
言わないけど!!
見た目までそんなに変わっていただなんて………、。
「自己管理ぐらい出来ると思ってたから、これまで言わなかったけどさ。」
ハルタの言葉が胸に突き刺さる。
でも、だからって、急に、こんな、
こんな酷いこと言わなくても、いいと思う、!!
「今のミアなんて、家畜以下だよ。人間扱いしてほしければ、ダイエットくらい頑張れるよね?」
さらりと乙女の傷を抉るようなことを言って、ハルタは”こんな彼女など見たくない”とばかりに私を置いて颯爽と船内へと入っていく。
そんな、私聞いてないよ。
確かに、ちょっとやばいかもとは思っていたけど。
確かに、甘いお菓子たちにそそのかされて、自分に甘くなって目を瞑っていたけど。
でもこれは、
本気で、
やばい。
一気に目が覚めた。
(ハルタぁっっ!!ごめん、!ダイエット頑張るからっ!ちょっと待ってー!)
(うるさいよ。家畜の分際で僕に話しかけないで)
(うわーん!!(こいつマジだー!!泣))
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