サッチと10歳児
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「ねぇ、サッチ。いいの?あんなことして…」
「いいのいいの。ぜってぇ楽しいって」
「でも、私マルコに怒られるのいやだよ」
「ダイジョーブダイジョーブ。バレなきゃいいんだよ」
「そうかなぁ…?」
心配そうな表情で俺を見上げるコイツは先日10歳になったばっかりのミア。本人は10歳になったというだけで大人になったと思い込んでるんだから余計に可愛い。
今日は珍しくコイツから「折角年齢が二桁になったんだから何かいつもと違うことをしたい」なんて俺に相談して来たもんから、度胸試しと言う名の悪戯を提案してやったのだ。まぁ相談相手が間違ってるなんて、野暮なことは考えちゃいけねぇよ。
「でもやっぱり、マルコにバレると思う…」
「心配しなさんな!もし万が一バレたらこのサッチにーさんが盾になってやるからよ」
「ホント?」
「俺を信じなさい!」
そう言って胸を叩いてみせると、やっと安心したのかミアはにこっと笑って俺を見上げた。
その姿があまりにも可愛くてぐりぐりと頭を撫でてやる。そんな俺の手を「髪がぐちゃぐちゃになるーっ」と必死に突き放そうとするミアは、まぁ、本当にこの船の天使だ。いや、別に俺がロリコンってわけじゃねぇよ。
「あ、マルコ来たぜ!」
「ひゃ、ホントだっ…!!」
そんなやり取りをしている間に、マルコが食堂に入って来て、ヤツの定位置へと向かって行く。
俺とミアはゴクリと息をのみながら、食堂の影からその様子を見守る。
といっても、俺は既に笑い出しそうなんだが。
なんてったって、いつもマルコが座る席にブーブークッションを仕掛けたんだからな。
これは絶対面白い。
「ああっ!マルコ座るよ!」
今まさにマルコが椅子に座ると言う時に、ミアは俺の服の端を握ってそう小声で実況する。
やっべぇ、マルコマジで座っちまうよ。
3、…2、…1……
『ブッ、ブフゥーッ…』
す、座ったぁぁぁーー!!!
ヤッベェまじで面白ェ!!!!
一瞬で固まる食堂の空気。
クルーには悪いが、笑いは耐えてくれ。お前ら死ぬぞ。
「ッ、ブフッッ……!!」
だけど、人のことなんて言ってられねぇな。
漏れねぇように手で口を押さえたにも関わらず、笑いが口から漏れる。
ミアも、一瞬俺を見て、にぃっと笑ってピースサインを作った。そして、悪戯成功が相当嬉しいのか、きゃらきゃらと可愛らしく笑い出す。
「悪戯大成功だな」
「うん!マルコがぶぅーって言ってた!」
「あのマ、マルコが、な!ブゥーっつってたな!ブハッ、」
「きゃはは、サッチ似てるー!!」
うんうん、ミアが楽しそうで実によかった。
……ってちょっと待て。おまえ、笑い過ぎじゃねぇか…?
んな大声で笑ったらマルコに気付かれちまうよ。………って。
やべ、遅かったか。
ミアの背中越しにマルコを見ると、丁度仕掛けを確認し終わったマルコが冷や汗大放出レベルの笑顔を浮かべていた。
うーん。これはやっぱり、
「よしミア!最後の度胸試しだ!」
「え?うん!なに?」
「今から目を瞑ってゆっくり10数えること」
「それだけ?」
「おう、それだけ」
「そんなのカンタンだよー!じゃあいくよー、いーち、にー…」
悪いな、ミア。
俺もマルコは怖いんだ。
妹よ、健闘を祈るぜ……!!
(きゅーう、じゅーっ!サッチー、目、開けるね?(パチッ))
(………ヨォ。(ゴゴゴゴゴゴ))
(……………………(放心))
(悪い子は、どうなるか、知ってるよな…?)
(……ッ、…ひっ、ひっ、……ッッわあぁぁぁぁぁぁああんんっっ!!! )
(ぉわっ!?ちょ、耳痛ぇ、!!)
(あああああああああぁぁぁあああ!!!!(号泣))
(………落ち着けよい。怒ってねぇから(呆れ))
(うえっ、ひっく、うっ、……(ぽろぽろ))
(落ち着いたか?(ぽんぽん))
(うぅっ、ぐずっ、まっ、まるこ、ご、ごめ、なさ、)
(よし、よく謝ったな。えらいよい(なでなで))
(うわーんっっ(脱力))
((ったく、ここまで泣くこたねぇだろうが…。俺は鬼か。))
(サッチのばーかっ!だいっきらい!!)
(グサッ!ごめんねミアちゃん!許してくんないかなぁー?)
(いやっ!きらい!!うそつき!!)
(折角ミアちゃんの大好きなケーキ作ったんだけどなぁー(チラチラ))
(……………ッ(ぷいっ!))
(ミアちゃんの大好きなあまーいクリームにフルーツもたっぷりだぜ?)
(…………むぅ……(チラッ)し、仕方ないからゆるしてあげる(ボソリ))
((あー。可愛いなーもう!))
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