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ビスタと8歳児





「悔しいか?」
「別に」
「“マルコはすぐ勉強しろってうるさいからきらーい”だそうだ」



少しだけ声色を変えて言うと、マルコは俺をじろりと睨んだ。
最初の方こそマルコに懐いていたミアだったが、船に乗って1年も経つとここのクルーにも随分慣れてくる。最近は、マルコよりも俺の所に来る事が多くなってしまった。マルコには悪いが、俺はそれで満足している。



「悪いな。」
「何も言ってねぇだろうが」



チッと面白くなさそうに舌打ちしたマルコは、知識だけはしっかり付けさせとけよ、と踵を返す。
少し寂しそうな背中を見送ると、タイミングよく小さな足音が聞こえてきた。ミアだ。



「びっすたー!」
「今日も元気いいな」
「いひひ、かわいいでしょっ」
「ああ、可愛いぞ」



わしゃわしゃと頭を撫でてやると、可愛らしい悲鳴をあげて逃げ回る。こういう時に素直に褒めないからマルコはだめなんだろうな。



「ねぇねぇビスタ!今日も一緒にお話してくれる?」
「いいぞ。じゃあ、お菓子を用意しないとな」
「やったー!ビスタがくれるおやつだいすき!」



俺の少し前を小走りで跳ね、俺の部屋へと先導する。
1年前、何の前触れもなく家族になったミアは、今ではこの船の天使とまで呼ばれている。クルーは皆、この天使のようなミアの事を溺愛しているのだ。
可愛らしい笑顔に天真爛漫な姿はこの船の癒しと言ってもいい。



そんなミアが俺に懐いてくれているのだから、思い切り甘やかしたくなるのは仕方のないことだと思う。



俺の部屋に着いてお菓子を用意すると、マシンガンのように喋りだしたミアは本当に楽しそうだ。
年相応なのだと思う。正直、人形の話やら、花冠の作り方とか、よくわからないことばかり話すのだが、それでも楽しそうに話すミアを見ると、こちらも楽しくなってくる。


だが必ずと言っていい程、このミアとの“お喋り”の時間にマルコの話題が出てくる事は、今はまだアイツには秘密にしておこう。









(ミアはマルコの事好きか?)
(マルコ?好きだよっ)
(じゃあ俺の事は?)
(もっと好きーっ!!)
((勝った…!)り、理由を聞いてもいいか?(ドキドキ))
(んー、だってマルコはすぐおこるもん。でもビスタはお話いっぱい聞いてくれるから好きー(にこーっ))
(そ、そうか(よし、ミアの話は絶対最後まで聞くようにしよう))
(でも、なんでみんな同じこときいてくるのかな?(きょとん))
(同じ事?)
(うん。おれのこと好き?って。)
(…………(まぁ、皆ミアからは好かれたいからなぁ(苦笑)))





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