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こいぬ→うさぎ





笑顔が素敵な皆の人気者、エース。
そいつが私の恋人である。



「なーなー、今日一緒に寝ようぜ」
「えー。昨日も一緒に寝たじゃん」
「いいじゃねぇか、減るもんじゃねぇし」
「減るよ」
「なにが」



私の体力が。



「………エースと寝ると寝返り打てないから首痛くなるんだよね」



流石に真っ昼間から情事についてたらたらと話すつもりはない。
だから、少しの間を置いて、別の事実を述べる。
毎回毎回、エースと一緒に寝ると抱き枕状態にされて身動きが取れないのだ。抱きしめられるのは、とても嬉しい事、だと言う事は認めるけど。



「だって離すとお前どこ行っちまうかわかんねぇだろ?」



別に、どこかに逃げようなんてそんなこと考えた事一度もないけど。
束縛か、と思った事もあったけど、船の上で他のクルーと話ててもふざけ合ってても、エースは怒った事なんてなかったからそう言うのじゃないと思う。
そう言うのではなくて、そう、きっとコイツは思った以上に、寂しがり屋なのではないのだろうか。

と、そんな私の思考を邪魔するかのように、なんの悪びれもなさそうな顔で太陽のような笑みを向けたエースは、なぁ頼む!とその眩しい笑顔の前で両手を合わせた。続けて、いいだろ?と首を傾ける仕草はいつも私からNOの選択肢を奪って行く。



「……。いいけど、」
「やった!」



私の言葉の続きなんて聞くつもりもないように、歓喜の声をあげたエースはそのままがばりと私に抱きついて来た。



「ちょ、エース、苦しっ、」
「あ、わり!」



へへ、と悪戯がバレた時の子供のように笑って、少しだけ私との間に隙間を作る。



「あのさ、エース」
「ん?なんだ?」
「別に、私どこにも行かないからね」
「え?」
「だからさ、時々捨てられた子犬みたいな顔するの、やめてね」



ぎゅってしたくなっちゃうから、とそう付け加えたら、エースはきょとんとした顔を向けて、その後柔らかい笑顔と共にふっと吹き出した。



「………なんで笑うの」
「わりィ。おれ、そんな顔してたんだな」
「まぁ、何て言うか、うん。してた」
「ミアがずっと一緒にいてくれんなら、子犬は卒業しよーかな」
「ふふ、だから一緒にいるって言ってるじゃん」
「うーん、でも四六時中一緒じゃねぇと、おれ無理。ミアのことすげぇ好きだし」



にしし、と悪ガキのような笑みになったエースとその口から発せられた言葉に、きゅんと胸の奥が跳ねた。



「だっておれ、お前と1秒でも会えねぇと、寂しくて狂っちまいそうだからよ」



あ、やっぱり。
子犬じゃなくて、うさぎだったみたいだ。

しかも、かなり究極、っぽい。







(1分1秒でも長く同じ時を過ごしたい)








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