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宣誓!





おれの女は、いつも話が急だ。
今日だって、さっきまで部屋でメシの話をしてたってーのに。



「エースってエッチだよね」



なんてニシシと笑いながら何の脈絡もない話を突拍子もなく発言する。
まぁでも惚れた弱みというやつか、こんな瞬間でもそんなヤツにおれはドキドキしっぱなしで。



「どーいう意味だよばーか」



とりあえず口から出てくるのは、照れ隠しの暴言ばかりだ。けど、コイツはそんなおれの発言も、全く気にする事はない。こっちは言っちまってから、ミアを傷つけちまったんじゃないか、なんていちいち気にしてるってのに。

ほんとーに、マイペースな女だ。

別に、嫌いじゃねぇけど。っつーか好きだけど。



「そのままの意味ですー」
「はあ?意味わかんねー」



ミアはむっとした表情のおれを見ると「ホントにわかんないのかなー」って言ってクスクスと笑い出した。

わかんねーよ。なんだよ。
いやまぁ、なんつーか男なんてエロがねぇと生きていけねぇけどよ。
けど、いつおれがお前にエッチな事をしたっつーんだ。いつだって、おれはお前の前じゃ紳士だろうが。不健康にも負けず、おれはお前のために我慢しまくってんだよ。

ガラでもねぇけど、よ。ちくしょー。



「だってぇー」



そんなおれの思考を邪魔するように、ミアのいつもより甘みを帯びた、でも楽しそうな声がおれの意識を無理矢理現実世界に戻す。

でも、おれがどんだけコイツを愛しているかなんて、心の中を見せるわけにもいかねぇから、いつも通りちょっとだけ乱暴な言葉で、口元が緩まないように引き締めた不機嫌そうな顔で答える。



「なんだよ」
「ふふ、昨日さ」



もう一度、ふふふ、と押さえきれないように笑ったミアは、ちらりとおれを見上げた。
その表情が可愛くて、性懲りもなくおれの心臓は激しく動く。ちったぁ慣れろよな、おれの心臓。なんて、心の中で呆れるけど、でもまぁ可愛いんだから仕方ない。


それはまぁ置いといて。
それよりも、昨日、ってなんだ?

おれはミアの言葉を復唱して、その先を促した。



「昨日?」
「うん、昨日。私エースいるのに部屋でそのまま寝ちゃったじゃん?」
「あー、うん」
「私さー、あの時さー、ふふ、実はね、」



あー、やべぇ。
やばい、やばすぎる。
ものすっげぇぇぇ、ヤバい予感がする。



「半分起きてたの!」
「………」



マジか。死んだ。おれ死んだ。
まさか起きていたとは。一瞬で昨日の記憶が蘇り、羞恥心から顔が熱くなってるのを感じて手の甲で口元を隠した。


そうだ、おれは昨日、寝てるコイツを横目に、たぶん、色んな発言をしちまった。「可愛い」「好きだ」から始まり、「撫でたい」「キスしたい」「抱きしめたい」果てには「脱がせたい」「抱きたい」まで口走ったような気がする。起こしたくはなかったからそこまで酷くはねぇが、若干寝てるコイツに悪戯を働いた気もする。というか、最悪な事に、コイツがイったらどんな顔すんだろうな、なんて考えていた。口走ったかは定かではない。


バツが悪すぎる。
予想外の展開に反応がついていけずに目が泳ぐ。無駄に、身体がそわそわ動いちまうのは仕方のねぇことだと思う。



「…………………怒ったか?」



おれにとっては数時間に値する程の沈黙の後、絞り出すように声を出した。
だけど、当の本人は全く問題ないとでも言うように「ううん」と嬉しそうに首を横に振った。


とりあえず、ほっとわからないように一息つく。
それこそ、コイツに捨てられでもしたら、おれはどうなるかわからねぇ。



「でも」



急にミアから放たれた言葉に、驚いて「おぉ、」と出た声が上擦った。くそ、かっこわりぃな。



「で、でも、なんだよ」
「ふふ、でも、エースがあんなにエッチなこと考えてるとは思わなかった」
「…………忘れろ」
「忘れない」
「……忘れねぇと、ホントにするぞ」
「………いーよ」



恥ずかしさで火照る顔を隠すように忘れるよう言ったが拒否されて、半ば投げ遣りに脅しともとれる言葉を言うと、ミアは少し視線をそらした後、ぽつりと肯定の言葉を発した。
本日二度目の予想外に、反応が遅れる。こうなったら、取り繕うなんてどう足掻いても無理なわけで。



「おっ、おま、じ、自分で何言ってっかわかってんのか?」
「…わかってるよ、エースのばか」



顔を背けながらそう言うミアの頬はほのかに色付いていて、それがより一層、おれの欲望を掻き立てる。


あーもう。
おれの数ヶ月間の我慢、さようなら。
紳士なおれ、さようなら。
昨日のおれ、偶然とはいえよくやった。



ドキドキと早く脈打つ身体で、ミアの手を取る。
とりあえず、ぎゅっと抱きしめてから、愛しい女の髪にキスを落とした。






余裕あるかは別として。
お前が嫌がる事は絶対にしねぇ。
お前が喜ぶ事はたくさんしてやる。
心配なんて、不安なんて、1ミリも感じさせねぇ。
そのかわり、幸せと喜びで全身を満たしてやる。
マジで、全力で愛し抜くことを誓います。


まぁ、うん。

………ってわけで遠慮なく!



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