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「昨日は大胆だったなァ?」



寝起き早々、隣から聞こえて来た上機嫌な声に、ぼんやりとした頭が徐々に覚醒していく。
にたり顔のイゾウを見た瞬間、即座に布団を頭の上まで被せた。続いて聞こえてくる、クツクツとした彼特有の笑い声。


やってしまった。


昨日、生まれて初めて、自分から、求めてしまった。



「なんだい、顔、見せてくれねェのか?」



昨日の余韻を残したかのような甘い声音に、顔だけでなく首までじわりと熱くなる。
そろりそろりと、布団を目元まで引き下げ、ちらりとイゾウを見上げた。瞬間に、片腕で頭を支えて私の隣に寝そべっているイゾウと目が合って、どうしようもなく、私は目を逸らした。
それにまた喉を鳴らして笑ったイゾウは、空いている手で私の前髪をゆっくりと横に払いのける。



「おはようさん」
「……おはよう、」



目を見ないでポツリとそう返事をすると、「やけにしおらしいな」と機嫌良さげに笑った。
それが面白くない私は、熱い頬はそのままに横目でイゾウを睨んでみる。



「イゾウ早起きだね」
「そりゃあ寝てねえからな」



不機嫌な声を出した私だったけど、イゾウの返答を聞いてポカンとした顔になる。



「寝てないの?」
「ああ、寝てない」
「なんで?何してたの?起こしてくれれば良かったのに」
「矢継ぎ早だな。」
「だって…、」



むう、と布団の下で頬を膨らませた私に、イゾウはニヤリと笑う。
あ、ヤな予感。



「ミアの寝顔見てた」
「えっ、」



やっぱり。
イゾウがこんな風に笑う時は大概が私で楽しんでいる時。

人の寝顔ずっと見てるなんてありえない。
変な寝顔だったんじゃないかとか考えたら、また恥ずかしくなって布団を少しだけ上に引き上げた。

先程からイゾウはにやにやとした笑いをやめない。



「昨日のおねだりは、もうしねぇのか?」
「…………なんのこと」
「へぇ、忘れてんなら、一字一句間違わずにミアが俺になんて言ったか教えてやろうか」
「うっ、嘘ですごめんなさい、」



この鬼イゾウ…!
顔から火が出そうになるくらい恥ずかしい。
何で昨日の私は、自分からイゾウに甘えるなんて事をしてしまったのだろうか。
きっと今日は一日中、このネタでからかわれるんだろう。



やりきれない葛藤の中で、私はイゾウにわからないように布団の下で盛大に溜息をついた。












(次はいつ聞けるか、楽しみだな)
(……次はありません)
(クク、)
((…ちくしょう。何を言っても今は負ける……))





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