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乙女チックBD





俺の予定ではこうなるはずだった。
夜の12時にミアが俺の部屋に内緒で来て誕生日おめでとうと言う。それにわざとらしく驚く俺。んでミアをおいしくいただいて、朝は一緒にいちゃいちゃと飯食って。昼も一緒にいて。こっそりミアが作ってくれいたケーキなんか食っちゃって。んで夜はまたミアをおいしく食っちゃって俺の誕生日は幸せのうちに終わる。最高じゃねぇか。



だけど今俺は食堂の端でテーブルに突っ伏していて。
何故俺といるのがミアじゃなくて、腐れ縁のコイツなんだ。



「ああぁぁー。俺の筋書きがぁぁー…」
「ま、諦めろよい」



いつもシャキーンと格好いい俺のリーゼントも今日は俺の気持ちを表したようにしんなりしている。



「くそー。このまま俺の日は終わっちまうのか…」
「プレゼント、もらったじゃねぇか」
「アレか!?今朝の!?あの渡し方からしてもう愛を感じねぇよ…!」



今朝のミアを思い出したのか、ブフ、と噴き出したマルコは無理矢理咳払いをして読んでいた新聞をたたんだ。
そのまま席を立ったマルコにつられて、俺も席を立ち、仕方なしに自室へと帰る。





今日の俺の(勝手な)予定は総崩れだ。
まず、愛しのミアは俺の誕生日になった瞬間に俺の部屋に現れなかった。そしてそのまま俺のそわそわは夜の闇へと消えた。
朝も部屋に来ねぇし。ま、いつも迎えに来てくれるわけじゃねぇけど。飯の準備で俺の方が 早いことが多いし。
まー結構へこんだわ。同じ船の上に住んでてまさか朝まで放置されるなんてな。

まぁ、それで、朝食の時にやっと会えたんだが、これが有り得ねぇ。
第一声が「サッチー!誕生日おめでとう!」可愛い笑顔付き。これはいい。可愛かった。そしてその後「あ、私ね、プレゼントがあるの」とちょっと照れ笑いをして言う。これも可愛いからいい。後ろ手にプレゼントを隠しているのを見て内心悶えた。んで、「はい!」って飛び切りの笑顔で背中に隠していた物を俺の前に突き出したミアの手にあったのは、キラリと光る包丁。しかも包みなし。一瞬固まったよ俺は。何が悲しくて誕生日に好きな女から包丁を突きつけられなきゃいけねーわけ。ミア曰く、「サッチ新しいの欲しがってたでしょ?」らしいが、誕生日だぞ?素っ裸の包丁って…。結局ミアの笑顔が眩しかったから俺も笑顔で受け取ったが。
そしたらミアのヤツ「じゃあ、私今日忙しいからもう行くね!夜サッチの部屋行くから」と俺の心臓を鷲掴みするキラースマイルでそう言い残して嵐のように去って行った。



「はあああぁぁ」



再度今日起こった事を思い返して、ありえねぇ、と呟く。
外はもう暗い。つまり、朝のアレ以降、俺はミアに会っていないわけで。
夜には来るとミアは言っていたので、もうそろそろ来る頃だろうけど。


自室のドアに手をかけると同時に、遠くから小走りでかけてくる音が聞こえた。耳に馴染むそれに、見なくてもそれがミアだと気付く。



「サッチ!タイミングよかったね」



にこりと笑ったミアに俺はそうだな、と素っ気なく返事をして部屋のドアを開けた。



「あれ?サッチなんか元気ない?何かあったー?」
「べっつに」



そんな俺のいつもと違う様子に、ミアはきょとんとしながら部屋に入ってくる。
全くコイツは、俺の気も知らねぇで。



「やっぱり。何かあったな?」



クスクスと笑いながらそう言ったミアに悪態を吐きたくなったけど、それでも笑うミアは可愛くて、どうしようもなく俺は無言でミアを抱きしめてそのままベッドにダイブした。



「わ!…もう、ビックリするじゃん、」



ぎゅうと抱きしめたままベッドに転がる俺にミアは文句を言う。
俺だって文句言いたいっつーの。



「ミアちゃんさー。今日何の日?」
「ん?サッチの誕生日。おめでとー!」
「…さんきゅ。」



そう明るく言われてしまっては、俺が大人げない行動をしていることがアホらしくなる。
無言になった俺を不思議そうな顔で見上げて来たミアは、一瞬間を置いてまたあのキラースマイルを俺に向けた。



「もしかしてサッチ拗ねてんの?」
「………まあな」
「今日あんまり構えなかったから?」
「おう、」



素直に白状した俺にまたクスリと笑ったミアはよしよしと俺の頭を撫でてきた。これくらいでほだされる俺じゃねぇぞ、。



「つーか、俺の予定では12時にミアが来て祝ってくれて、セックスして、一日中一緒にいて、ミアのケーキ食って、いちゃいちゃして、セックスするはずだったのに」
「セックス多すぎ」
「笑うな」
「だって」



ふふ、と今度は困ったように笑ったミアは、続けて俺に話しかける。



「まさかサッチがそこまで綿密に今日の予定を考えてるとは思わなかった」
「俺は意外と乙女なんだよ」
「ふふ、そうみたいね」
「今朝もいきなり包丁って、刺されるかと思ったぜ、」
「あ、プレゼント気に入らなかった?」
「いや、すげー、気に入ったけど」
「なんだ。よかった」



よくねぇよ。俺の一日が台無しだ。



「ごめんね。来年はちゃんとする」
「まじで?」
「まじで。サッチ思ったよりも乙女だったし」
「ミアは思ったよりもサバサバしてるよな」
「ふふ、そうかも。」
「それでも可愛くて好きだけど」
「……私も乙女でもサッチ好き。他はもう無理だけど、とりあえず、サッチの予定のいちゃいちゃしてセックスはまだ間に合うけど、どうする?」
「………する」



ぎゅっと緩めていた腕をもう一度キツく回すと、ミアは「サッチ可愛い」と言って俺を抱きしめかえした。









(12時まで抱いていい?)
(長期戦だね)
(今日会えなかった分、ミアに欲情させて)
(……12時超えても、サッチが好きなだけ抱いていいよ)
(ミアちゃん太っ腹。すっげー嬉しい)
(でもその代わり、)
(ん?)
(私の誕生日は私が好きなだけサッチ抱くから)
(ぶっ、……了解。)







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