top
name change
you'll be mine.





この船に乗ってから、朝ご飯を欠かした事はない。
それは私が4番隊だからというのもあるし、元々朝は抜かないタイプだったからというのもある。


昨日は一睡も出来なくて、自室に帰った後もぼけっとしていていつの間にか朝になっていた。
どうしようもなくて、結局いつも通り朝食作りに行ったけど、手つきが危ないと皆に止められた。
ちなみに首筋とか胸元にはイゾウ隊長からの何か、その、色々!が付けられていたから、マフラーぐるぐる巻きで行った。皆には暑くねぇのか?って軽く弄られたけど、サッチ隊長には爆笑されてしまって。だから睨んで無視してやった。サッチ隊長なんて嫌いだ。


そんな風にしてキッチンを追い出されてしまって、だけどやっぱり朝食は食べなきゃなって思って手頃な時間にまた食堂へと足を運んだら、今一番会いたくない人がいて、固まってしまった。

そう、イゾウ隊長だ。

すぐに逃げなきゃと思ったけど、私が踵を返す前に見つかってしまった。距離はあったけど、あの目に見られると何故か身体が動かなくなる。ちょいちょいと指先で呼ばれて、仕方なく重い足を動かした。



「……おはよう、ございます、」
「ああ、おはようミア」



いつも通りの隊長に、もしかして昨日の事は酔ってて覚えてないんじゃ、なんて思いが頭を過る。



「朝飯今からなんだろ?座れよ」
「…はい、」



あれ、これは本当に、忘れてる、?


結局昨日私はイゾウ隊長の女になる事を承諾した。とりあえずあの場を抜け出したかったし。忘れているならそれでいい。だけど、忘れていたら忘れていたで、イゾウさんの彼女ではない事実にちょっとだけ寂しさを覚える。なんて現金なんだ。



「元気ねぇな?どうした?」
「いえ、なんでもありません!」



この様子では、きっと昨日の事も忘れているのだろう。それならそうと、私も昨日の事はなかった事として振る舞おう、と元気に返事をした。
それに満足そうに笑ったイゾウ隊長は、机に肩肘をついて私の方を指差す。



「お前それ、暑くねぇか?」
「え?あ、マ、マフラーですか?」
「ああ。室内なんだし、外しちまえよ」
「いいいいいえ、これは、このままで、いいんです、!」
「なんだ。理由でもあんのかい」



理由は目の前のアンタだよ!なんて口が裂けても言えなくて、焦りついでにごにょごにょと言葉を濁した。



「何か、見られたくねぇもんでもあんのかい?」
「………まぁ、そんな感じ、です、」
「へぇ…。じゃあもっと付けときゃ良かったな」
「う、え…??」



さらりと言われた隊長の言葉に耳を疑う。
今、隊長は、もっと付けとけば、って言っていた。ってことは、マフラーの下に何があるかを隊長は知っている訳で。
涼しい顔をしている目の前の隊長とは裏腹に、私の顔にはどんどん熱が集まっていく。



「たたっ、隊長、あの、お、覚えて……?」
「あ?…ああ、ミアが俺の女だってことか?」



うえああああ!!
無理!…無理!!

素面なのに、こんなことを言うなんて、流石に冗談ではないのだろう。と、いうか、こんな事冗談で言うイゾウ隊長なんて知らない。

頬に集まった熱に加え、今度は目頭まで熱くなってきてしまった。



「た、隊長、いつから、覚えて…、」
「全部」
「ぜ、全部、」
「サッチからミアを受け取った時から、全部だ」
「え…、」



ニヤリと笑った隊長に、頭が真っ白になる。



「う、そですよね。だって、隊長、悪酔いしてて、」
「俺が呑まれるように見えるか、酒に?」



見えないけど、でもだから昨日、びっくりして、。



「で、でも、隊長、昨日、気持ち悪いって、」
「言っただけだろ?」
「じゃ、じゃあ、昨日のは、」
「フリだ」
「なんで、そんなこと……」
「ミアが面白ェから。」
「そんな…酷いです、。…じゃあ、昨日の条件は、」
「有効」



にっこりと機嫌良さそうに微笑む隊長を前に、未だ整理しきれていない頭で、ぐるぐると同じ思考を繰り返す。
つまり、昨日のは全てイゾウ隊長の自演で、全く酔ってなんていなくて、私はイゾウ隊長に遊ばれていただけ。
でも昨日の条件はまだ有効。



「………イゾウ隊長意味わからないです、」
「何がわかんねェんだ」
「…なんで条件が有効なのか、」
「んなもん、俺がミアを欲しいからに決まってんだろォが」



開いた口が塞がらないって、きっとまさに今これ私が体感している。
全身から火が噴き出しそうなくらい熱くなって、隊長の顔を見れずに俯いた。



「どうせ昨日、寝れてねぇんだろ」
「……隊長の、せいじゃないですか」
「だろうなァ。じゃあ責任取って添い寝でもしてやろうか」



喉を鳴らして笑ったイゾウ隊長は、手を伸ばして俯く私の頬をそっと撫でて余裕のある笑みで私に告げた。



「確かに昨日は少し遊んだが、俺は本気だからな」



妙に冷静にその言葉を受け止められたのは、きっとイゾウ隊長の目が本当に優しかったからかもしれない。











((ミアはからかいがいがあるが、先が長そうだなァ))


((私も好きですっていうタイミング、完全になくした…!!))








| TEXT |




「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -