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that's not what I expected





「アンタ本当に大きくなったね」



昔と変わらない紳士的な恰好をした元少年に声をかける。
この紳士に初めて会ったのは多分コイツが10歳かそこらの頃。
私は革命軍の諜報をしていて時々ドラゴンさんに会いに本部に顔を出していた。
そこに突然現れたのがコイツ。包帯ぐるぐる巻きしかも悪ガキ!
歳こそ5−6歳の違いはあるけど、実年齢よりも大人びた考えのコイツの思考は何故か年上の私とあまり変わらなくて。
その頃は革命軍の中に歳の近い子がいなかったからか、本部に帰るたびにコイツは一番若い私に付きまとってきた。



「久しぶりに帰ってきて言うことはそれかよ」



言葉とは裏腹に気にする様子もなく、ニカリと笑ったソイツ、サボは頭の上に乗っている帽子を取ってくるくると手で回した。
最後に会ったのは、何年前だったかなぁ。4−5年前くらい?
1年前のマリンフォード事件の後、サボは見たこともないくらい荒れたらしい。
サボの兄弟のことは耳が痛くなるほど聞いていたから、正直すぐに飛んで行ってあげたいと思ったけれど、それもできなくて。
まぁそんなこんなで、長期不在にしていた分の情報を持って本部に帰ったら、私よりもずいぶん大きくなったサボがそこにはいた。



「まさか私がサボを見上げる日がくるなんて」
「おれはミアを見下ろせて嬉しいけどな」
「相変わらずむかつくガキだなぁ」
「まだそれ言ってんのか?」



以前ならすぐに食って掛かってきたのに、なんだか大人な余裕まで出てきていて、あのサボに笑って返されたことにむっとする。
まったく、ガキは私か。サボの言葉なんかにむっとしてしまうなんて、大人げない。



「乗せられなくなったってことはちょっとは成長したってことかしら?」



でもやっぱり私は大人げなかったようだ。
嫌味っぽく言ったら、案の定サボに笑われた。



「ミアは全然変わってないな」
「何それ嫌味?」
「いや、褒め言葉」
「…そりゃどーも」
「本当だって。信じろよ、ミアが変わってなくて安心した」



本当に嬉しそうに、ほっとしたように笑顔を浮かべたサボに、不覚にもときめいてしまった。
ドクンと脈打った心臓を隠すように腕を組んでサボを見上げる。サボなんかにときめいてしまったなんて、一生の不覚だ。



「なんで私が変わってなかったら安心なのよ」



あの頃よりももっと仕事出来るようになったし、胸だって大きくなったわ。
性格は、わかんないけど。
年上の威厳を保とうと強気でサボを見ると、サボはそんな私を見ておかしそうに笑った。



「そんなの決まってるだろ」
「自分の方が大人ぶりたかったとか?」
「おれはガキか」
「ガキじゃん」
「ふーん。ミアにとっておれはまだガキか…」
「ガキ以外の何者でもないじゃない」



ふん、と言い返すと、今度は寂しそうに笑う。

あ、いや。そういうつもりじゃなかったんだよ、サボ。
ちゃ、ちゃんと大人として認めてあげるわよ、。だからそんな顔…

遠い日に見たことのあるサボのしゅんとした顔に焦ってしまい、あたふたと前言撤回の言葉を探す。
それを言葉に乗せようとした時に、ふっとサボが堪えきれないものを吐き出すかのように笑い出した。



「え…、な、なに」



もちろん私はなんでサボが笑っているのかわからない。
気でも触れてしまったのだろうか。
とりあえず距離を取っておこうかと一歩後退ったら、それを止めるようにパシリと右腕を掴まれた。いきなりのサボの行動にまたも心臓が跳ねる。掴んだことは何度もあるけど、掴まれたことなんて、一度も、ない。



「ちょ、なにサボ?」
「悪い、ミアが面白くて。」
「はぁー?人がせっかく心配してやったのに」
「だからごめんって。おれ、ミアが帰って来るのずっと待ってたんだよ」
「…は?」



若干展開が速すぎて頭がついていけていない。
コイツは私に早く帰ってきてほしいなんて言う可愛いガキだっただろうか。いや、絶対に違った。



「ちょっとそれ面白いんだけど。サボ私に会いたかったの?」
「うん、会いたかった」
「………、」



私の知っているサボはこんなに素直じゃなかったはずだ。
予想外のストレートな回答に、思わず言葉に詰まる。



「…もう、止めてよね。新手の遊び?」
「遊ぶ歳でもないだろ、お互い」
「じゃあ、何の冗談、」
「ん?冗談じゃないさ。おれは本気」



掴まれた右腕に少しだけ力が加えられ、サボは私を覗き込んだ。
じっとこちらを見つめる視線に絡み取られる。私の知っているサボは、こんなに強い目をしていただろうか。
もう一度心臓が大きく動いて、咄嗟に目をそらそうとした時に、サボは今まで聞いたこともない低い声で囁いた。



「ミアが変わっちまうなら、その影響元はおれじゃないと認めない」
「は、?なん、」
「だっておれ、ミアのことずっと好きだったからな。」



知らなかった。
心臓って、爆発するのか、。


サボの言葉が耳に流れて脳が理解する前に、私は持ち前の運動神経でサボの腕を振り払いドラゴンさんの元へと駈け出した。
悪ガキだったのに。悪ガキだったのに…!

問題はドラゴンさんの命令でしばらくここにいなければならないこと。

どうしよう、どうしよう、と火照る顔を両手で隠しながら私はひたすら足を動かした。











(あっれー?ミアのやつ逃げちまったよ)
(せっかく長年の想いを伝えたのにねー)
(うわっ、お前覗いてたのか!悪趣味だぞ、コアラ!)
(だぁってほら、みんなに報告しなきゃだし(にまにま))
(ヤメロ…頼むからヤメテくれ(がくーん))
(うふふ、クリミナルの新作出たみたいなの!)
(1週間以内に献上いたします…(悪魔…!))
((やっぱサボ君いじるの楽しいなぁー))






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