sugar sweet
「ハルタってさー、前はあんなじゃなかったよね」
「あんなって?」
「いやだから、なんていうか。…げろ甘?」
「ブハッ!まー、確かにな。そんだけ愛されてるってことだろ」
サッチに愚痴ったら、他人事のように笑って軽くあしらわれた。
さっぱりでも時々意地悪、とそんな感じだったハルタだけど、付き合ってからはほとんどそんな事はなく。逆に大事にされすぎて若干居心地が悪い。優しくされるのは嬉しいんだけど。
はあ、と軽く息を吐き、食堂の端でココアを飲む。
サッチはキッチンにロールケーキを取りに行ってくれている。
ハルタはまるで、このココアのようにまったりと甘い。
「あれ、ミア。こんなとこにいたの」
「あ、ハルタ」
噂をすれば、とは言うものだ。
今の今まで考えていた本人が食堂の入り口から入ってきて、私に気付くとニコニコ顔で席まで近付いてきた。
「休憩中?」
「うん」
「一緒にいい?」
「うん」
「ミア今日も可愛いね」
「………。」
出たよこれ。
好きな人に面と向かってそう言われて、恥ずかしくないわけない。
破顔して言われたその言葉には答えずに、手の中のココアを口に運ぶ。
「ひとりなの?」
そんな私なんてお構いなしにハルタは私の席の真ん前に腰掛けて話を続ける。
「サッチもいるよ」
素直にそう返すと、ハルタは面白くなさそうに「ふーん、」と相槌を打った。
「………ヤキモチ?」
「うん」
「っ、……まじで、」
冗談でヤキモチかと問うと、ハルタは素直にYESで返してきて。思わず言葉に詰まったけど、続く言葉もなくて、再度それを尋ねる言葉でハルタをちらりと見た。
「うん。僕のミアなのにね。」
はぁ、と困ったような笑顔でそう言うハルタに、不覚にも胸が高鳴る。
以前のハルタなら、可愛いなんて言わずに“今日も可愛くないね、もっと女らしくなったら?”って言ったのに。
ヤキモチ?なんて聞いたら、“僕がヤキモチなんて焼くと思う?自信過剰?”くらいは言っていた。
目の前のこの彼氏様は、一体どうしてしまったのだろうか。
高鳴った胸を隠すように、私はもう一度ココアを口に運ぶ。
ハルタがわかんない。だけど、以前よりも心拍数が増えている事は確かで。それに比例して、私のハルタへの好きはどんどん増えていっている。
「………ハルタ、好きだよ」
普段絶対に言わない言葉をポツリとそう零すと、ハルタは吃驚した後、すごく嬉しそうにはにかんだ。
(おっまたせー!(どしっ))
(わ!ちょ、サッチ!体重かけないで重い!!)
(…………。)
(あれ、ハルタいたのか?お前もロールケーキ食う?)
(……サッチ、僕のミアに触らないでね(にこ))
(、(あ、ちょっとだけ前の雰囲気に戻った))
(…………スミマセン、(こえー!))
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