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「ハールタ!」
「…なに」



甲板の隅で寝転んでいるハルタの上から仁王立ちでその顔を覗き込む。
ぽかぽか陽気の下で今の今まで目をつぶっていたこの男は気だるそうに両目を開けると、これまた気だるそうな声で返事をした。



「何じゃない。今日一緒に朝ごはん食べるって約束、忘れてたでしょ」
「……。パンツ見えるよ」



私の質問には答えずにそうハルタは言うと、大きくあくびをしながら身体を起こした。
同時に珍しくスカートなんて履いていた私は言われて気付いた事実にハッとして、急いでスカートを押さえてハルタの隣に腰を下ろす。



「そんなの、今更じゃん」



腿の上に広がるスカートの位置を正して、隣のハルタをにらむ。
別にパンツ見られたからといって騒ぐような関係でもない。だけど、話題をそらされたことが面白くない私はかわいくない態度をとることを選んだ。



「うん、今更だね。でも僕今日のよりもこの間のが好み」



私の視線なんてまるで堪えてないかのようにふわりと春のような空気でそんなぶっ飛んだことを言うものだから、私はハルタに分からないように頬を膨らませた。



「…見えてたんじゃん。ってかちょっとは恥じらいを持って会話しようよ、」
「なんで?それこそ今更じゃん」



確かにそうだけど…!
だけどここまでオープンに人のパンツの話をされると流石の私も居心地悪い。というか、この間私が履いていたハルタ好みのパンツがどれかの方が気になる。普通にパンツは毎日替えるから、この間のなんて言われてもどれかわかんない。ましてやハルタとはほぼ毎日一緒に寝ているのだ。余計どれのことか分からないよ。



「ミア、怒ってる?」



ハルタ好みのパンツがどれかが気になりすぎて無言になってしまった私を怒ってると思ったらしい。ハルタが私の顔を覗き込んで、そう尋ねた。
けど、急に近くなったハルタの顔に私はびっくりしてしまい言葉に詰まっていると、ハルタはふっと笑ってそのまま私にキスをした。
ベッドの中でのキスはいつものことだけど、なんでもない時のフレンチキスなんて久しぶりすぎて、ぶわりと胸がいっぱいになって、心臓がきゅってなった。



「…怒って、る」



今のキスで今朝のことなんて吹き飛んでしまったけど、欲張りな私はどきどきする鼓動を隠すように嘘をついた。



「ミアが怒ると面倒だからね、…困ったな」
「……」
「じゃあ、これあげる」



あ、いつもの。

ハルタの手にあるものに気付く。
目の前に持ってこられて素直に口を開けると、七色の味の飴玉が放り込まれた。

これは二人の仲直りの飴。
ハルタのように優しくて不思議と心が温かくなる飴。どこから仕入れてくるのか、いつもハルタはこれを持っていて。ごめんねの印に私にこれをくれる。
ころりと口内で飴を転がすと、ぷっくりと膨らんだ片頬を突かれた。



「ごめんね、朝ごはん一緒に食べれなくて。許してくれないかな」



いつもはこれでまぁいいかと許してしまうのだけれど、欲張りになってしまった私には少しだけ物足りない。



「許すけど、」
「けど?」
「もうひとつ条件」
「うん。なに?」
「……もう一回、キスしてほしいな、」



恥を忍んでポツリとつぶやく。
一瞬目をまんまるにしたハルタは、クスリと笑って、その後私にキスをくれた。









((ぱふん)膝、かして)
(え、あ、うん。また寝るの?)
(うん。午後からまた忙しくなるから)
(そっかー(しゅん))
(…今日は一緒に寝ようね)
(え、でもハルタ明後日まで書類で忙しいって…)
(一緒に起きたら朝食も一緒に食べれるでしょ?)
(…っうん!(〜〜!キスしたい!(そろりそろり)))
(あ、今キスしたらそのまま襲うから)
(へぁっ!?(目瞑ってるのに何でバレるの!?))





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