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アイツの弱点を暴け!





「マルコ!」
「なんだい」
「マルコの弱点教えて!」
「フッ、俺に弱点なんてねぇよい」
「ぎゃふん!腹立つドヤ顔!」



という簡易なやり取りで罰ゲーム失敗になりそうだったので、作戦変更。
今回の罰ゲームはマルコの弱点を見つける事。ちなみに罰実行者は私だ。



「で。なんで俺までついて来なくちゃなんねぇんだよ」
「いいじゃん、デートデート」
「デッ、………仕方ねぇな、」



草むらの影から前方のパイナップルを見張る。
一人じゃつまんないから、とエースも一緒に連れてきたのだ。
そう。今日は数週間ぶりの島。ついこの間も別の島に寄った気がするけど、今回の滞在はちょっと長めだ。
聞いてダメなら目で確認!てことでエースとこそこそとマルコの後をつけている。どうにか弱みを握れないものか。
ちなみに露出狂が近くにいるとバレ易いので、とりあえずエースには上着を着てもらって私はバカンス用のサングラス装着。気分だけはノリノリだ。



「あっ、エース!マルコ行っちゃう」



サングラス越しにパイナップルが遠ざかるのを確認し、エースの手を取って少し先の建物の影へと隠れる。



「バッ、お前、引っ張んなくても大丈夫だって、!」
「なによー、エースが遅いからじゃん!」
「つーか、ミア早く手はなせよ、」
「え?あ、ってうわ、エース顔赤っ!」
「はっ!?赤くねぇよ!」
「、?もしかして上着着てるから暑いの?」
「そそそそそうだよ悪いか」
「いや別に悪くないけど」



露出狂もここまでくると末期か。
と、そう思ったけど、挙動不審気に繋いでいた手を振りほどいたエースに悪戯心が疼いた。



「………なぁーるほど」
「な、なんだよ」
「エース君は手を繋ぐのが恥ずかしかったんでちゅかー、っくふふ」
「なっ…………!!!」
「ぶふふ、意外とおこちゃまなんでちゅねー!」



馬鹿にするような口調でにやにやしながらそう言う。
わなわなと震えるエースは拳を突き上げたけど、行き場のないそれは壁の中へ音を立てて消えた。



「えー、エース大人気なーい。物に当たるのよしなよー」
「て め え は … !」



おお、エースの後ろに炎が見える!これが怒りの炎かぁー。ってあれこれマジで火?



「ちょっと街中で人体発火させないでよ!」



マルコにバレたら一大事!
急いで消火活動にあたる。といっても身体を張ってエースに抱きつくだけだけど。
エースの身体に触れた瞬間に、消火完了でほっと一息つく。言葉遊びは楽しいけど、目的を見失っては元も子もない。
ひょこりと顔をだして建物の影からマルコを確認すると、随分先に行っていたようで、鎮火とともに急に静かになったエースの手を取り、また先にある影へと身を隠した。



「って言っても、マルコの弱点ってなんだろうねー」
「知らね。パイナップルじゃねぇか?」
「ブフッ!ちょ、エースそれどうゆう意味」



予期していなかった言葉に堪えきれず噴き出した。



「後ろからじわじわと後退するパイナップル……」
「ぶくくく、ちょ、エース、やめ、」



エースはにやにやと私を見下ろして、指一本触れずに私の腹筋を攻撃してくる。さっきの仕返しにしては酷すぎるそれに、マルコを見張っていた視線がどうしてもヤツの後頭部へといってしまう。そして腹筋が悲鳴をあげるという負の連鎖。
ってゆうかこれマルコ聞いたら般若どころの騒ぎじゃなくなるよ…!



「お、マルコが止まったぞ!」
「えっ、マジで!?っくふ、ふっ、どこっ?」



身を乗り出したエースに続いて自分も身を乗り出してマルコの後頭部、いや、マルコを確認する。
確かに、立ち止まって小さな路地の方をじっと見ている。かと思ったら、きょろきょろと周りを確認する素振りをして、神妙な面持ですっとその路地の中へと消えた。



「……」
「……」



同時に無言で顔を見合わせる。
こくん、と頷いて意思表示をすると、エースと静かにその路地へと近付いた。



「…何があるのかな。真剣な顔してたね、」
「一気に楽しくなってきたな」
「ちょ、エースわくわくしすぎ」



顔に出易いエースにくすりと苦笑が漏れた。



「なんか、危ないと嫌だから、先にエースが覗いて」
「俺は生け贄か。ま、いいけどよ。任せとけ」



だって何かあっても私即対応出来ないもん。
うきうきと鼻歌が聞こえてきそうな程乗っているエースの背中に隠れて、エースが路地の中を覗いている間ドキドキとしながら待つ。だけど3秒もしないうちに「ふぐぅ…っっ!!!」というエースの悲痛な叫びが聞こえて、ビクッと肩を飛び上がらせた。直後覗いていた顔を路地から離して、エースは私の横にお腹を抱えて倒れ込んだ。
何これ敵!?マルコは!??と一瞬焦ってパニックになりそうだったけど、よく見るとエースは呼吸困難に陥りそうな程お腹を抱えて笑っているだけで。



「ちょ、な……」
「ブッッ、クッ、……!」



笑っているだけなんて。安心してへなへなとその場に座り込んでしまい、でも同時にエースをここまで笑わせる何かってなんだろう、と好奇心ばかりが強くなる。

ひーひー言っているエースを背後に、覚悟を決めた私は路地に手をかけてマルコに見つからないように中を覗いた。



「えっ、ね、ねこ…?」



と、そこにいたのは可愛い子猫。その愛らしさにめろんとなってしまいそうになったけど、すぐにその子猫を抱き上げているのがマルコだと気付いて目が点になる。



あ。ヤバい。じわじわとくる。



あ の マ ル コ が 破 顔 し て い る な ん て !!



「ブ、ク、……グ、…!」



腹筋を駆使する。だけどどう頑張ってもそれは無意味に終わる訳で。
瞬間、私は路地から出来るだけ離れてエースの隣に転がった。

マルコに気付かれるのだけは避けなければ。命は大切にするべきだ。



「エ、ス、ちょ、なにあれ…!」
「さ、殺人級、」



2人でひーひー言いながら地面を転がる男女は余程恐ろしく映るのか、街行く人々は私たちを遠巻きに避けて行く。
でもそんなのは今は全く気にならない。さっきの光景が頭から離れない。



「ミア見たか、?マルコのヤツ、ね、ね、ねこに、話しかけてたぞ、ック、」
「ど、どーなの長男あれブクク、。てか、あんなきもい顔みたことないんだけど」
「ブハッ、きもいっつーなよ、甘いと言え、甘いと、」



兄の意外な一面を見てしまい、ものの数秒で私とエースの腹筋は精神的に割れまくってしまった。あ、エースは物理的にも既に割れてるけど。


あーあ。
もちろん家族は誰にとってもそうだけど、それを抜いたら確かにマルコの弱点って無いと思う。
でもきっとこれって今まで誰も知らなかったマルコの弱点で。



まさかあの般若マルコが猫大好きだったなんて…!ぶはっ!…!!
3ヶ月は今の光景で笑い転げられるな。









(お、マルコ)
(ああ?なんだよい、サッチ)
(エースとミアがお前に話があるんだと(にやにや))
(…?)



(お前ら俺に話ってなんだよ、い………)
((ブハッ、一瞬目見開いた!)マルコおかえり!)
(マルコ俺達のお願い聞いてくれよ!)
(それより、…それはなんだ、)
(何って、子猫だよ?)
(にゃーん)
(可愛いだろー(にしし))
(ダメだ。元のとこに戻して来い!)
(えええっ!まだ何も言ってないよ(マジで!?予想外!))
(どうせ飼いたいとか言うんだろうが)
(ダメか?こんなに可愛いんだぞ?マルコはコイツを捨てろって言うのか?)
(うっ、。…………だめだ。戻して来い。)
((間が…葛藤してる(笑)))
(俺らちゃんと面倒見るからよ!頼むよ!)
(そういう問題じゃない。ダメだ。聞き分けろよい)
(そっか…。ねこちゃんダメだって。ごめんね(しゅん))
(ぐっ……!ふっ、船酔いして苦しい思いしたらどうすんだ!何かあったらどうする!船に獣医はいねぇんだよい! 早く戻して来い!!あとエースお前ちゃんと書類提出しろよい!(どぴゅーん…ぐすん!))
(あ!逃げた!)
(げ、書類…!)




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