留守番電話の先
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今日変な男に会った。
いつも通り彼氏に急に呼び出されて連絡なしのドタキャンの中で話しかけられた。暇潰しだったらしい。
暴言吐かれてなんだコイツ非常識!って思ったけど、結果的にはいい人そうだった。
「はぁ…」
ベッドにごろりと寝転び、サロンの人から渡された紙を見つめる。
そこには今日会った男の名前と電話番号。
かけるべきか、かけないべきか。
いやまあ、無理矢理連れて行かれたとは言え、見ず知らずの女のサロン代をもってくれたんだからお礼の電話一本くらいするのが筋だとは思うけど。でもよく考えればそれはアイツの自己満足だし。失礼なヤツだったし。
「ローさん、ねぇ。変な名前。何人だろ」
日本語は達者だったけどな。長身だし、外国の人なんだろうな。
あの男の姿を思い出して、ぼんやりとそんな事を思う。
ぐたぐたとベッドの上で過ごし、しばらくして意を決して携帯電話を手に取った。
「やばい、緊張する」
じわりと手の平に汗を感じたけど、思い切って紙に書いてある番号を押した。
そのまま携帯を耳に押し付けると、数秒後、いつもの呼び出し音が鳴る。
お礼を言うだけ。だけど、普段しないことだから緊張する。
10コールを過ぎた辺りでブツっと呼び出し音が切れる。代わりに抑揚のない女の人の声が流れた。
留守電かよ。ついてない。
ポチリと終話ボタンを押して一方通行の電話を切る。
私の場合いつもそうだけど、留守電に入れる時は事前にイメトレしないと無理。だって相手側に残るし、噛んだり変な事言ったりしたら嫌だもん。
「あーっと、今日はサロンに連れて行っていただいてありがとうございました。もし迷惑でなければお金は払います、…とかかな」
とりあえず、こんな風に言おうという言葉を頭の中でまとめて、リダイヤルのボタンを押そうとしたとき、着信音が鳴った。
いきなりの事に心臓が止まるかと思ったけど、すぐに携帯を確認する。
「あああああ!!!」
うきうきと心が弾んで思わず顔が綻ぶ。
大好きな彼氏からの着信に、私はローさんという男の存在すら忘れてしまった。
(もっ、もしもし!)
(…えっ?今から?)
(全然大丈夫!予定とかないし!)
(うん、うん。すぐに行くね!)
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