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男性不信1歩手前 <ジョズ編>





涼しい風が船内を吹き抜ける。
俺の手には出来立てのプチマフィン。チョコチップにブルーベリーなどそれぞれ味が違う。ちなみに作ったのは俺ではない。

最近なかなか姿を出さない末妹に元気を出してもらおうと、これを作ってもらったのだ。
ここ数日間、あのちょこまかとよく動くミアを探すも全く姿を見せず、その理由も知らない訳ではないので無理して会いにいくこともしなかった。けどまあ、家族である以上心配はしてしまう訳で。


ミアの部屋の前に立つ。
中からミアの気配がした。



「……、」



声をかけてノックをしようと思ったが、仲の良かった兄弟まで皆避けられているのだ。ミアを困らせることは避けたい。


そこまで考えて、途中まで上がった手を下げた。
代わりに、手に持っていた小さな袋に入ったマフィンをドアの取っ手に静かにかけた。


かさり、と袋が掠れる音がして、中の気配が動く。
ミアに気付かれてしまったな、。



ドアを開けられる前に足早にその場を立ち去り、ドアが開くのと同時に廊下の曲がり角を曲がって己の姿を隠した。
どうやら、姿は見られずにすんだようだ。



「…だれ?」



キィとドアを開け、控えめに言葉を出したミアをそっと影から覗く。
きょろきょろと不安そうに周りを見渡していたが、ドアノブにかかった袋に気付くとゆっくりとそれを取って中を開けた。とたんに、ふわりと嬉しそうに笑って、俺もつられて笑顔になってしまう。
最近は、偶然船内で見つけても、笑顔なんて見ていなかったものだから、久しぶりに見れたミアの笑顔に、早く元のミアに戻って欲しいと願ってしまった。


もう一度きょろきょろと周りを見渡して、誰もいないことを確認すると、にひひと悪戯っ子のように笑って、両手でマフィンを抱えてほくほくとした顔でミアは部屋へと帰っていった。
それを見届けた俺は、今度こそ自室への道を歩き出した。










(とりあえずは、ミアの笑顔を見れて満足だな)





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