男性不信1歩手前 <ハルタ編>
ちょこちょこと姿を見るたびに、ピュンと回れ右して走っていくミア。
この間の罰ゲームが関係しているらしい。
一応心配はしているし、一度話をしようとナース達にもミアがどこにいるか聞いたりもしてみたけど、結局は一時的なものだと思うし、そこまで気にしないことにした。
でも、こうも何度も同じことをされては気が散る。というか、顔見て何度も逃げられる方の身にもなってほしい。
「うぴゃっ!」
今回も変な声を上げて、僕を見て回れ右をして船内に駆けていったミア。
そう、何度も逃げ切れると思わないでよね。
この船の中なんて熟知しているから、ミアが走り去った方向がどこに繋がっているかなんて、ミアの行動パターンさえ考えればすぐにでもわかる。
早速先回りをして、ミアが出てくるであろう扉の横に隠れて腕組みをして待った。
しばらくして「あーびっくりした、」という安堵の声と共に扉からミアが出て来て、やれやれと腕組みをしたままこちらに気付かないミアに後ろから声をかける。
「そこの逃げ切れたと思ってるお馬鹿さん、ちょっと待ちなよ」
案の定飛び上がったミアはこちらを向くと、一瞬固まってまた逃げようとした。
「逃げたらどうなるかわかってるよね?」
笑顔でそう言うと、こちらは向かないままもまた一旦動きを止めるミア。
まあ、逃げないだけでも進歩だからとりあえずはこれでもいい。
「で?なんで僕を避けるの?僕ミアになんかした?」
別に聞かなくても理由なんてミアがおかしくなった時からわかってる。
だからこの質問はちょっとした意地悪だ。
「だ、だって、」
「なに?」
「ハルタは、なにもしてない、けど、」
「けど?」
「だって…、うっ、」
何その呻き声。
急になんだとはてなマークを頭に浮かべていると、その一瞬の隙をつかれてミアは走り出してしまった。
「だって、無理!!ごめんハルター!!」
ぴゅーんって効果音がすごく似合う懸命さで僕から逃げていくミア。
取り残された僕の顔は不機嫌に染められる。
無理って。
よりムカつくんですけど。
(イライラしてきた。)
(…気晴らしにサッチボコりに行こう。)
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