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反撃の火蓋を切った夜




おなかがすきすぎて夜中に目が覚めることってあると思う。



「……」



ぱちっと目をあけて、空腹を訴えるおなかに手を当てた。だけどせっかく暖かくなった布団から出るなんてもったいなくて、くるりと背を丸めてもう一度眠りにつこうとする。



「………っっああー!!」



何度空腹は気のせいだって思ったところで、気になりだしたら眠ることなんて出来なくて。盛大に布団を放り投げてベッドから起き上がる。
こうなったら、こっそりキッチンから何か拝借してくるしかなさそうだ。


椅子にかけてあったカーディガンを軽く羽織り、目をこすりながらキッチンへと向かう。真夜中の船内は静かで、なんとなく自分も音を立てないようにゆっくりと歩いた。


今日は月が綺麗で、差し込む月明かりでも十分足元がわかる。慣れた道のりを進み、キッチンに入った。
いつもはサッチが何か用意してくれるけど、もちろんこの時間にコックがいるはずはない。自分で何か用意しなきゃとは思うが、いかんせん冷蔵庫にはエース対策で鍵がついているし…。その辺からりんごでもくすねようか、と一息ついてから棚の中を適当に物色し始める。



「…ん?」



がさごそとなるべく音を立てないように食べ物を探していたけど、棚の奥の方に、食べ物を入れるにはお粗末というか汚れた見慣れない箱があって、何だろう、と興味本位で引っ張り出した。



「なにこれ、」



箱の正面に“ミア用罰ゲーム”とかかれているのを見て、嫌な予感しかしない。これは、どういうことなのだろうか。


きょろきょろと注意深く周りを見渡して、誰もいないことを確認すると、私はその箱を持って月明かりが一番入る窓際へと移動した。近くの椅子に腰掛け、テーブルに箱を置く。こくりと唾を飲み込んで、ゆっくりと箱を開けた。

と、そこに入っていたのはいくつもの小さな折りたたまれた紙。本気で嫌な感じしかしない。けど、勇気を出してその中のひとつを摘み上げて中を開いた。



「…なんじゃこりゃ、」



呟いた言葉が空に消えると同時に、もう一枚、もう一枚と中身を確認していく。読んでいくうちにふつふつと頭に血が上っていくのがわかって、自分を落ち着かせるためにキッチンに駆け込んでグラスに水を注ぎ一気に飲み干した。

がちゃん、と重力に従ってグラスを置き、震える拳を強く握る。



「あんのくそ兄貴ども、絶対に許さん…!!!」



何かと思ったら、中身はすべて罰の内容。性格を表したようなきちんとした字、殴り書き、ミミズが張ったような字、読めない字、スペルミス、すべて私の知っているクソ兄共の筆跡と同じだ。

道理で、最近私の罰が続くなあと思っていたのだ。しかも、隊長達が当たったら拒否しそうな罰ばかり。今やっと謎が解けた。
あいつらは皆グルで私をはめていたんだ。そして、負けたからしょうがないって、人が頑張って罰してんのを高笑いして見てたんだ。



許さん。
復讐してやる。



そう心に誓って、テーブルに戻ってそこに散乱する紙くずを見つめる。
ビズタに「復讐は新たな悲劇しかうまないぞ」とやさしく諭された遠い日を思い出すが、そんなの今はどうでもいい。そんなの、ビスタの字で“膝枕をする”と書かれた紙を見た後じゃ何の効力も持たない。そして絶対ビスタに膝枕なんてしてやらん。


一枚一枚また折りたたんで綺麗に箱に戻す。
一連の動作を無言で静かに終え、その箱を同じ場所にそっと戻した。


先程と変わらない柔らかな月明かりの中、おなかがすいていることなんてすっかり忘れて、どうやって復讐してやろうとそればかりを考えながら私は自室へと歩き出した。








(みーんなー!お仕事終わった?)
(あらー、ミア!いいところに来たわね。)
(今から皆でお茶するところよ)
(それはよかった!じゃあ、今から皆でゲームしよっか☆(にこ!))




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