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私のサンタさん


目の前にいるイゾウが可愛すぎる。
白いおひげをつけて赤い服を着て。



「サンタさんお願い聞いてくれてありがとう」
「てめぇ後で覚えとけよ」



サンタの格好をしたイゾウは私を見て凄むけど、白くて長いおひげが可愛すぎて全然怖くない。
ってゆうか、まさか着てくれるとは思わなかった。


クリスマスに欲しいものなんて別になかったけど、どうしてもイゾウのサンタ姿だけ見たくてイゾウに懇願してみた。
最後まで渋ってたイゾウだけど、結局は彼女つまり私の言う事を断れなかったらしい。



「イゾウサンタはいい子にプレゼント持って来たの?」
「どこにいい子がいるって?」
「いるじゃん、ここに!」



目の前!ここ!と自分を指差すけど、イゾウは見えないふり。



「このサンタさん性格悪すぎる…」



チッと舌打ちすると、フンと鼻で笑われた。



「サンタに舌打ちするヤツのどこがいい子だ」
「じゃあもう悪い子でいいもん。サンタさんのばーか。」
「認めた途端暴言かい」



ク、と笑ったサンタは、暑かったのか邪魔なのか、可愛いおひげを取ってしまった。



「取っちゃうの?可愛いのに」
「鬱陶しいんだよ」



ぽとりと床に落ちたおひげ。
半分隠されていた顔が露になって、いつものイゾウが見える。ちょっとだけサンタ気分半減。ってゆうかおひげがなくなっただけなのに、いやに色っぽいサンタになった。

ま、折角のクリスマスだし、それでもいっか、と気を取り直して持って来たバッグを手に取る。中を漁って目当ての包みを取り出すと、目の前のサンタさんに手渡した。



「はい。別に悪い子からもらっても嬉しくないでしょーけど」



半分嫌味、半分照れ隠しでそういうと、目を丸くしたイゾウが「まさかミアが準備してるとは思わなかった」と最低な事を正直に言う。



「別にいらないなら、返して」
「いや、もらう」



むっとして包みを取り返そうとすると、身を逸らしてそれを遮る。にやりと笑ったイゾウはするりとラッピングのリボンを解き中を取り出した。
可愛らしい包みから出て来たのは、イゾウが最近買い替えようかと呟いていた武器のお手入れセット。気に入ってくれるか不安半分でイゾウの様子を見ていると、嬉しそうにすっとそれを撫でた後、意地悪な笑みでこっちを見た。



「サンタに渡すプレゼントにしちゃあ、物騒すぎるなァ」
「…海賊サンタにはお似合いでしょ」
「違ぇねぇな。気に入った、ありがとな」



イゾウのお礼がくすぐったくて、目を逸らして頷いてそれに答える。
すると、今度はイゾウが赤い服のポケットに手をつっこみ、小さい包みを取り出して私に向かって投げた。
緩く弧を描いたそれをキャッチして、イゾウを見る。



「いい子にはプレゼントなんだろ?」
「!」



あるならさっさと渡しなさいよ、って思ったけど、ちゃんと用意してくれてたのが嬉しかったので、そんな事は言わない。いい子だからね、私。



「ありがとう!」



えへへと笑ってお礼を言うと、丁寧に包みをあける。
中身を取り出すと、落ち着いた藍色の髪留め。控えめに花があしらわれている。
好き同士とは言っても、いつも憎まれ口叩くし、私は可愛い素振りなんて見せた事ない。なのに、こんなに、女の子らしいものをくれるなんて。



「気にいらねぇか?」



手の平に乗せた髪留めを見つめながら、何も話さなくなった私に、イゾウが声をかける。



「ちがうの。ちょっとびっくりしちゃって」



困ったように笑った私に、イゾウは眉をひそめた。

あ、誤解をうまないうちに、ちゃんと話さないと。



「まさか、イゾウがこんな可愛いものを私にくれるとは思わなかった」
「別のがいいなら、」
「ううん、そうじゃないの。私…」
「?」



イゾウにちゃんと女の子扱いされてるのが嬉しかったの。
なんて、いつもの私の性格からして恥ずかしくて言えない。
だから代わりに、イゾウに近付く。



「ねぇねぇねぇ!イゾウ髪結うの上手いでしょ?つけてつけて!」



本当に嬉しくて、にこにことしながらイゾウにお願いする。あ、だめだなぁ。にこにこが止まらない。



「まァ、嫌なら変えてきてやるから言えよ」
「え?へへ、これが嫌そうに見える?めちゃくちゃ嬉しいよ」
「…そうかい。そりゃあよかった」



だって、イゾウが私に選んでくれたんでしょ?嬉しくないわけないじゃん。
今日だけつけて、部屋に帰ったらなくさないように大事にしまっとこう。そして毎日眺めてにやにやしよう。

緩くあげた髪をまとめて、藍色の髪留めをつけてくれる。



「できたぞ」
「いひひ、似合う?」
「ああ、」



嬉しくて変な笑い方になっちゃった。だけどそれも気にならないくらい、にこにこが止まらなくて。



「サンタさん、ありがとう」
「また一年、いい子にしてろよ」
「…、!」



それって、来年もあるってこと?
イゾウの未来に、ちゃんと私がいる事に、胸がきゅっとなる。



「ちゃんと、いい子にしてるよ、」
「期待してるぜ」



まとめた髪が揺れて肩からするりと落ちる。
見上げた視線の先にはイゾウがいて、頬を撫でられたと同時に私は目を瞑った。





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