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ケーキ買ってこうかな




「エース、ケーキ買って来たよ」



冷蔵庫に入れとくね、と何度来たか分からない部屋のキッチンへと入っていく。
お昼頃に着く予定だったのに、人でごった返す街に予定を狂わされてしまった。今はすっかりお昼過ぎで、待ちくたびれたエースの顔もご機嫌斜め。



「ごめんって。だって人が多くてケーキなかなか買えなかったんだもん」
「言ってくれたら一緒に行ったのによ。そのまま外でデートでもよかったし」
「んー、人多すぎてやだ。今日くらいエース独り占めでまったりしたいもん」
「…まー、うん。許す」



素直な私の言葉に気分を良くしたらしいエースは、遅くなってしまった私を許してくれるようだ。



「で?まったりって何すんだ?」
「エースは何したい?ってゆーか何もプラン立ててないんだね」
「ぷらん?」
「いや、普通はさ、こう、彼女喜ばせようみたいなサプライズがあるもんじゃない?」
「そうか?悪ィ。なんも考えてなかった」
「素直でよろしい。許す」



少しだけ、少しだけ何か考えてくれているんじゃないかって期待してたけど、エースだから仕方ない。クリスマスだけど、いつもと同じデートになりそうだ。
エースと一緒にいれるだけで幸せだし、別に文句なんてない。

手を引いてキッチンから出て、部屋に入る。ソファにふたりで 座った。



「じゃあ、まったりしよっか」



にっこりと笑いかけて、エースの首に腕を絡める。
そのままちゅっとフレンチキス。



「これ、5分後にはまったりとはいかなくなると思うぞ」
「ふふ、だろうねぇ」



でもしたかったんだもん。仕方ないじゃん。



「でもだめ。」
「じゃあ夜まで我慢してやるよ」
「我慢は健康に良くないよ」
「どっちだよ」



冷静につっこむエースにデコピンをされて、少しだけ離れる。ドメスティックバイオレンスだよ。まあ愛がある分、今朝のキットカットよりは痛くないけど。


すりすりとおでこをさすりながら、エースの隣に座り直してテレビのスイッチを押す。間を置いて出て来たのは、最近はやりだしたお笑い芸人の誰か。彼女のいない芸人大集合らしい。

ピトリとエースの腕に絡み付いて体重を預ける。テレビを見る体勢はバッチリ整った。



「エースは彼女がいてよかったね」
「まーな」
「何その微妙な感じ」
「スッゲー嬉しい」
「棒読みムカつく」



エースの脇腹を軽くつねると、痛ぇと言いながらエースは笑った。



「私もまぁ、彼氏がいてよかったわ。クリスマス一人で過ごさなくてすむし」
「なんだそれ。俺はクリスマス使い捨て男か」
「そうかもね」
「ミア……」
「なによ」
「素直になんねーと…、こうだぞっ!」



ヤバ、と思ったのも時既に遅し。エースの両手が私の脇腹をくすぐる。
逃げようともがくけど、笑いすぎて力が入んない。



「ちょ、ごめ、ギブギブギブ!!」



息切れする程に笑いながらもやめるようエースに懇願する。私だけこんな仕打ち酷い。でもエースはくすぐり効かない。不公平だ。



「で?ミア、俺がなんだって?」
「エースが彼氏で良かったです!」
「嘘っぽいな」
「え、ひど!もー…」



むっと頬を膨らませて可愛くエースを睨む。
だけど、このやり取りすらも楽しくて大好きだと思うから、今日くらい、本音で言ってあげよう。
顰めた顔を破綻させ、もう一度ちゅっとキスを贈った。



「本当に思ってるよ。エースが私と一緒にいてくれて良かったって」



おふざけモードから急に変わった私に、エースはびっくりした顔をしたけど、すぐにふっと優しく笑ってエースも私にキスをくれた。



「俺も。ミア以外彼女とか考えらんねーから。俺といてくれてありがとな」



今度は私がエースのありがとう発言にびっくりする。
私だって、同じようにエースにありがとうって思ってる。



「ふふ、大好きエース」
「おう。…メリークリスマス、ミア」
「ん、メリークリスマス」



くすぐったくて甘くて。
幸せがいっぱいの部屋でまたふたり、静かにキスをした。





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