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募る感情





「マルコさん好きです!」
「ミア…今日も元気だねい」
「マルコさんの顔見ると死んでも生き返るくらい元気でますんで!」
「そうかい」
「うわマルコさんテンション低っ!あ、そうそうマルコさん」
「?」
「(首を傾ける仕草もきゅん!)次の島、もうすぐじゃないですか」
「明日の昼には着くと思うが…なんかあんのかい」
「はい!デートしませんか?」
「しねえ」
「えええええええっ!即答…(がくり)」
「………。デートはしねえが、親父の酒を買いにいく予定がある。付き合うかい?」
「っっえええええええええええ!!!??」
「うるせぇよぃ」
「すみません(ピタリ!)」
「で?」
「行きます行かせていただきます!」






来る日も来る日もマルコさんにアタックし続け、その姿が日常へと形を変えた頃手に入れたマルコさんとのデート権。嬉しいなんてもんじゃない。
いつもは大人の余裕でかわされるけど、なぜか今回は上手くいった。
本人はデートじゃないって言ってるから、もしかしなくてもカウントされてないと思うけど。でもそんなの私には関係ない。だって二人でお出かけできるんだ。絶対親父の酒も私の幸せで5倍くらい美味しくなるよ。一石二鳥だよね!











デートは島に上陸してから2日目。
当日の朝はマルコさんは隊の用事があるって言ってたから、待ち合わせはお昼から街でという事になった。
待ち合わせとか、本格的にデートみたいでどきどきする。
いつもよりも早起きして、船の中をうろうろしてそわそわと時間が来るのを待つ。



そろそろ船を出ようかな、という頃、半裸の男に声をかけられた。



「お、ミア。今から街か?」
「エース」
「なんかいつもと雰囲気違うな」
「! どどどど、どうかな?似合う??」
「ん?まあ似合うけどよ。お前にしては地味じゃねぇ?」
「うっさい黙れエース!大人っぽいと言え!」
「うわ怒んなよ。なんで今日はめかしこんでんだ?」
「うひひひ、聞いて驚けマルコさんとデートなのだ」
「おおおおお!ついにか!」


Vサインで報告すると、エースは自分の事のように喜んでくれた。
いい奴だなぁ。


「なるほど。だから大人っぽくってか?」
「うんそう。マルコさんの大人の魅力に少しでも近づけるように!」
「じゃあ男の俺から一つアドバイスしておいてやるよ」
「え、なになになに!」
「髪、下ろしていけ」
「えぇっ!せっかくおだんご頑張ったのに!うなじ攻撃!」
「確かにうなじも一理あるが。お前考えてもみろよ。」
「うん」
「適当とはいえ、ミアはいつも髪結んでんだろ?」
「確かに」
「今回みたいにしっかりうなじ見えてるわけじゃねーけど、まー見ようと思えばお前のはいつでも見れてんだ」
「おお!」
「つまり、髪下ろしていった方が普段と比べてギャップがあっていいってこと」
「なるほど!」
「加えて髪下ろしてた方が俺はエロくて好きだ」
「ご教示ありがとうございますエース先生!!」
「(ごきょーじってなんだ?)おう、いつでも相談しろよ!」
「とか言ってる間にヤバい遅れる!!」



思った以上に時間が経っていて焦る。
ごめんエース!遅れるからもう行くね!と走りながら謝る。
頑張れよー!と返してくれたエースの声を遠くに聞きながら、自室へと入り、結い上げた髪を解いていく。
少し癖が出ていたが、ワックスでなんとか形を整え鞄を持って、今度は街へと走り出す。



普段なら走れば間に合う距離だけど、今日はスカートだし、少しヒールの入っている靴も履いているから思ったように走れない。
あーもう、遅れたらエースのヤツ呪い殺してやる!!!



バタバタと待ち合わせ場所まで行くと、マルコさんは既にそこにいて。
心の中でエースを500回くらいボコボコにした。




「マルコさんっっ、ごめんなさい!遅れましたぁっ!!」



肩で息をしてマルコの前で腰を折り息を整える。
こんなはずじゃなかったのに、汗だくだし、髪もぐちゃぐちゃだし最悪だ。
こんな事なら髪は結ったままの方がよかった。



「本当にお前は…」
「すみませんっ!」



あんなに楽しみにしてて、何回もお願いしてやっと一緒にお出かけしてくれる事になったのに、当の本人が遅れるなんて、本当にありえない。
申し訳なさすぎて、さすがに私もしゅんとなる。



「…俺を待たせるとは、偉くなったもんだよい」
「いだっ…!」



俯いていたらマルコさんからチョップを食らった。



「ご、ごめんなさい…」



まさかあのマルコさんからチョップ(痛くない)を貰うなんて思わなくて、呆然とマルコさんを見上げた。



「…髪、下ろしたのか」
「は、はいっ」
「…似合ってるよい」



走って来て乱れてしまった私の髪にそっと触れ、マルコさんは私の目をみてそう言う。
さわさわと何度が私の髪を撫で、最後に前髪に触れ乱れた髪を整えてくれた。

今までマルコさんから私に触れてくれるなんて、親父が逆立ちしたってありえなかったのに、あり得ない事があり得ている事実に私の思考はショートしそうになる。ちなみに心臓はさっき一回爆発した。
いつもみたいに、マルコさんの前では元気な私でいたいのに、止まらないどきどきやいつもと違うマルコさんに調子が狂ってしまう。



「もう大丈夫か?」
「?」
「走ってきたんだろい?」
「あ、大丈夫です!問題なしです!」
「でもまだ顔赤いぞ。茹で蛸みてぇ」
「こ、れは…!だいじょうぶ、ですっ」
「じゃあ、行くぞ」
「はいっ!」



顔が赤いのはあなたのせいですよ!と心の中で毒づき、
先に歩き出したマルコさんに置いていかれないように後を追う。

頼りになる大好きな広い背中を見ながら、
ああ、思った以上に私はマルコさんのことが好きなんだ、と実感する。
船の上でふたりきりになる事なんてたくさんあったのに、今はその時とは比較的にならないくらい自分が動揺しているのがわかる。



「…マルコさん」
「どうした?」
「私途中で倒れちゃったらごめんなさい」
「?」
「だから、あんまり優しくしないでくださいね。心臓壊れそうです」
「!」



クク、と喉で笑い、マルコさんは私が隣に来るまで待って、私の頭を撫でた。



「ミアが倒れたら、俺が抱いて船まで帰ってやるよい」
「!!、そ、そんなことしたら私本当に死んじゃいますよ……」
「じゃあ人工呼吸か?」
「!!!!」



ついに堪えきれなくなったのか、噴き出し笑い始めるマルコさん。
なんか私ばっかりドキドキしたり赤くなったりで悔しくなる。



「もう、先!行きますからね!」



照れを隠すようにそう言ってスタスタと先を歩くと、未だ止まらない想い人の笑い声が後ろからついてきた。





(帰ったら、エースに私の分の肉をたくさんあげよう、)








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