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、感謝はしているが




「よく働くなァ」
「はい?」



このところ16番隊は偵察とか戦闘とかが続いて、いつもよりあわただしくしていた。やっと静かな日々が戻ってきたと思った時に残っていたのは散らかった書類の山。

イゾウさんと隣同士に座って、報告書やら溜まった書類を片付けていく。



「そういうイゾウさんは、さっきから手が止まってますよ」



くすりと笑って持っていたペンをそのままにイゾウさんをチラ見する。イゾウさんは心底退屈そうにこちらを見ている。頬杖をついているその下には何枚かの書類。手が止まっているというよりは、書類と向かい合う気すら既にないようだ。



「ああ、飽きた」
「飽きても、やらなきゃ書類は終わりませんよ」



そういいながら私は視線を書類に戻して、報告書の続きを書く。これを書けば私の分はおしまい。イゾウさんはさっきからさぼってばっかりだから、あと1センチくらい書類の山がある。

2、3行書き足して、あとはイゾウさんのサインをもらうだけ。そしてマルコに提出。

最後の分を書いてピリオドを打つ。静かにペンを置いてかたりと席を立ち、備え付けのポットでお湯を沸かす。その間に、お茶の準備をしながらイゾウさんに話しかけた。



「じゃあ、イゾウさんのと私の書類、交換します?」
「ミアの分はもう終わってんじゃねぇか」
「ううん、まだ終わってないですよ」
「?」



先を促すイゾウさんに、ふふ、と笑みがこぼれた。
お茶の葉を持ったまま歩み寄って、机の上にあったイゾウさんの未完成の書類を掴みとる。その代わりに、私が済ませた書類をイゾウさんの前に置いた。



「イゾウさんのサインがないと、書類が完成しないんですよ」
「どこだ?」
「一番下です。内容確認して、サインお願いしますね」



そこまで言ったところで、音が鳴ってお湯が沸いたことを知らせる。そのままイゾウさんの答えも聞かず、急須のところまで戻ってお茶の葉を入れ、熱いお湯を注ぎ込む。
少し置いてから湯飲みに注ぎ始めた頃、イゾウさんの声が聞こえた。



「本当によく働くな」
「…いやですか?」
「海賊が聞いてあきれるぜ」
「もう…いいですよー。好きでやってますから」
「ま、感謝はしてるがな、」



仕方ないという表情で言うイゾウさんに、えへへと笑顔で返す。
熱いお茶を気をつけて運んで、「どうぞ」とイゾウさんの前に置くと、ちょいちょいと顔を引き寄せられ触れるだけのキスをされた。



「…お給料前払いですか?」



嬉しくて少しだけ頬を染めて笑う。



「馬鹿言え。俺がしてぇからしたに決まってんだろ」



不敵に笑ったイゾウさんにときめく胸を押さえ込んで、慌てて交換した書類の1枚を手に取る。
こんな書類早く終わらせて、心置きなくイゾウさんとの時間を満喫したくなった。






(イゾウさん!早く書類終わらせましょう!)
(……了解、ミア 副 隊 長 !(なんでそんなにやる気なんだよ))
((なにそれ!なんか棘ある!))






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