だいきらいだっつってんだろ
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「マールコっ!それあとどのくらい?」
「あー、30分」
書類と向き合っているマルコの後ろで枕を抱えたままベッドの上で寝返りをうった。
「じゃー暇だから終わるまでお話しよ!」
「終わってからでもいいだろ」
「終わってからは暇じゃなくなるもん」
「わがまま」
「今に始まった事じゃないでしょ」
「ああ、身にしみてわかってるよい」
話しながらも止まる事なくペンを動かすマルコ。彼にとって、会話をしようがしなかろうが、仕事に支障はない。
「じゃーねぇー、何しようかな」
「話だろ?」
「うん。でもなんか面白いことが、あ!」
「……なんだよい」
「じゃあ、今から思っている事と反対のことしか言っちゃ駄目ね!」
「めんどくせぇ…」
「ってことは面倒じゃないってことだよ」
にひひと笑ってそういうと、マルコは軽く溜息を吐く。
なんだかんだ言っていつも構ってくれるマルコは、今回も私のくだらない遊びに付き合ってくれるようだ。
「じゃあ今から私の質問に答えないでねー」
「わかったよい」
「ちょ、わざとでしょ、」
さっそく拒否ってくるマルコにつっこむと、書類と向き合いながらこちらを向きもせずに鼻で笑った。
「もー、ちゃんと答えないでね」
「ああ、答えない」
その言葉に満足げに頷く。
「んじゃね、えーっと、マルコはその書類終わったら私と遊んでくれないんでしょ?」
「どうするかねい」
「えーっ、構ってくれるって言った、ないじゃん」
「サッチの野郎が提出期限を守るから、やらなくちゃいけない仕事が減ったんだよい」
コノヤローサッチ。
私のマルコを困らせるなよもう。
これでまた私とマルコの時間が減っちゃうじゃない。
「マルコのバーカ。ばかばかばーか!」
「…これは一応褒め言葉として受けとっててやるよい」
「そりゃどーも!」
べっとマルコの背中に向けて舌を出す。
そしてマルコの匂いがする枕をぎゅっと抱き直して口を尖らせた。
「この働きマン」
「反対語はもうやめたのかい」
「うっさいばーか」
「やめてない事にしとこうか」
「時々は彼女の待遇を良くするというのは大変愚案だと思うんですが」
「考慮する余地など微塵もないねい」
反対の事を言ってるはずなので少しは考えてくれるようだけど、ぴしりと言われる言葉にひやっとする。
だけど拗ねてしまった私の心はそのまま回復する事はない。
「私はマルコの事こんなに嫌いなのに」
「…、」
「マルコ本当は私のこと好きなんでしょー」
「嫌いだよい」
「…、」
ここはウソでも好きだと言えよ、このパイナップルヤロー!
反対語とはいえ、ちょっと傷ついたじゃないか。
マルコはとんとんと机に散らばっていた書類をまとめて、かけていたメガネをはずす。
そのまま私の方を振り向いて、あまり見せない子供のような悪戯顔を見せた。
「だから大嫌いだっつってんだろい、馬鹿ミア」
(ったく拗ねてんじゃねーよい)
(マルコ今の反対語なしでもう一回言って!)
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