top
name change
隊長業務一時放棄



「イゾウ隊長、すみませんでした」
「……」



村の端っこ、皆から見えない所で、深々と頭を下げて今日の失態を詫びる。
立ち寄った島で起きた今日の戦闘での私の行動は、褒められるものではなかった。イゾウのフォローがなければ、家族が怪我をする所だった。



「隊長なんて、慣れねぇ呼び方すんじゃねぇよ」
「私のけじめです、」



イゾウとは恋人同士だ。でもそれ以前に隊長と隊員。迷惑をかけたなら、しっかりと謝るのが筋。恋人だからって許されたくない。



「お前のそのしっかりした線引き、嫌いじゃねェな」



クツリと喉を鳴らしたイゾウは、今度は“隊長”の目で私を見る。
緊張して無意識に背筋が伸びた。



「じゃあ、遠慮なく隊長として、言ってやる」
「、はい」
「お前は、今日の行動を後悔しているか?」
「…していません。でも、間違った行動だったとは思ってます」
「後悔してねぇなら結構。あのガキを守ったんだろ?」



逃げ遅れた子供が一人いた。だから、いても立ってもいられなくて、危ないと分かってたけど、そちらを優先した。
結果、家族が危険に晒されて、でもイゾウがそれをフォローしてくれて事なきを得ることができた。



「でも、代わりに家族を危険に晒しました」
「お前さんは、自分の家族を信じちゃいねぇのかい」
「…?」
「俺はたとえあの時俺がフォローをしなくても、彼奴らなら自分でなんとかしてたと思うがねェ」
「信じて、ない、わけじゃないですけど、…」



信じてないわけじゃない。それは本当。自分が皆を守れるなんて烏滸がましい事思っていない。でもそれでも、今日のは回避出来たはずだから、。



「ミア、お前さんはもう少し肩の力を抜くべきだな」
「……隊長、甘やかしは嫌です」
「甘やかしじゃねぇよ。今回のミアの判断は、皆正しいと思ってる」
「え、?」
「ミアがそうしてなくても、他の奴らが同じ事をやってたさ」
「……」
「それでも、今回の事を悔やむってんなら、もっと強くなんな」
「…、」
「それでどっちも守れるようにすりゃあいい。」
「……はい、」



話は終わりだ、と言いたげにイゾウは私との距離をつめる。
私の前で立ち止まると、今度は優しい表情で私の顔を覗き込んだ。



「隊長業務は終了だ。次はお前さんの男としての仕事だな」
「、!」



ニヤリと笑って、私を許可もなく抱き上げる。イゾウの左腕に座るように抱かれて、バランスを崩さないように両腕をイゾウの首に絡めた。



「こ、子供みたいに抱き上げなくても、」
「泣き顔見られてェなら、はじめからそう言え」
「…う、イゾウのばかぁ」



そのままぎゅっとイゾウの首に抱きつき、肩に顔を埋めてぽろりぽろりと落ちる涙を隠す。我慢してたの、バレてたんだ。



「こ、怖かった。私のせいで、皆怪我しちゃうかって、」
「そんな柔な奴らじゃねェよ」
「イゾウがいてくれて、良かっ、た」
「あたりめぇだ」
「うぅー、ぐすっ、イゾ、」
「なんだい」
「あり、がと」



ふわりと空気が変わって、イゾウが笑ったのが分かる。



「イゾウ、」
「なんだい」
「おいしいチーズケーキ食べたい、」
「泣き止んだらな」



ぽんぽんとゆっくりと背を叩いてくれるイゾウに安心する。本当に子供みたい。でもイゾウの近くにいるこの場所が、一番安心するんだ。



「わたし、イゾウの恋人でよかった、」
「…やけに素直じゃねぇか」
「、だめ?」
「いや、俺も、ミアと一緒に居れて嬉しいぜ」



イゾウの言葉がくすぐったくて、もう一度ぎゅっと大好きな背中に手を回した。





| TEXT |




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -