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チキンレース



「エース好きな人いる?」
「いる」
「マジで」



少女は驚いたように振る舞うが、すぐに少年から目を逸らし遠くを見つめる。その表情は少し寂しそうだ。



「誰?」
「ミアには絶対教えねー」
「ケチー」



明るい声で不満を言う少女が泣きそうな顔をしているが、少年は遠くを見つめているためそれに気付かない。



「そういうお前はどうなんだよ?」
「なに?」
「好きなヤツ、いんの?」



少年は少女の方を振り向き、緊張したような、そして不安げな面持ちで問いかける。



「……いるよ」



少し間をあけて、自分の靴先を見ながらそう言った少女に、少年は誰にも分からないように息を呑む。



「…、誰だよ」
「エースには絶対教えない、」



靴先で地面をつつきながらそう答える少女の声は小さい。
少年はその小さな声を逃さず聞くと、少女に気付かれないように肩を落とす。



「…上手くいくといいな」
「エースもね、」



お互いを想って放たれた言葉が、寂しくその場に響いた。












((早く気付けよ、俺の気持ち))
((早く気付いてよ、私の気持ち))





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