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ポーカーフェイス







「あれ?もしかしてエース?」





街中を一人で歩いてたらすれ違った綺麗な女に声をかけられた。

女は俺の名前を呼んでいるが、俺ははっきり言って見覚えはない。

いくら相手が綺麗な女でも知らないヤツに名指しされて当然いい気はしない。





「アンタ誰?」





少し睨みをきかせて言うと、女はキョトンとして、その後

もしかしてあたしのこと覚えてないの?

と 笑った。





「だから、誰?」

「ホントに覚えてないんだ」

「つーかマジで誰だよ。気味悪ィ」





会話を打ち切ろうと止まっていた足を再度動かし始める。

女は俺の隣をちょっと小走りでついてきた。





「何か用あんのかよ?」

「別にないけど」

「じゃあついてくんな」

「だってあたしのこと覚えててくれてないなんて悲しいじゃん」

「……」





本当に知り合いだったらという思いが頭を掠めてそれ以上は強く言えなかった。

俺は歩く速さを少し落として隣の女をチラリと見た。

俺より低い身長(まぁ、可愛いな)

さらりと伸びたストレートの髪(気持ちよさそう)

整った肌(白すぎだろ)

くりっとした瞳(アイツに似てんな…)

…………。

……。





「…お前」

「ん?何?思い出した?」

「…………ミア?」





女の顔がパァッと明るくなった。

どうやら俺の思ったとおりらしい。





「やっと思い出してくれた!?ホントに忘れられちゃったかと思って心配しちゃった!」

「ま…ここも何だしどっか店入ろうぜ…」

「そうだね」





嬉しそうに微笑むの女。

何を隠そう一年前まであの鬼マルコの彼女だった。(そして俺の片思いの相手でもあった)

一年前、マルコと別れてそれからずっと姿を見せなかったのに何で今更こんな所にいるのか。

しかも前会ったときより数倍綺麗になってる。その証拠にさっきまで誰だか本当にわからなかった。





「あー、お前もうこっちに戻ってこないんじゃなかったのか?」

「うん、最初はそのつもりだったんだけどね」

「仕事か?」

「違うよ」

「じゃあ何で?」





店員が運んできたオレンジジュースを口に流し込みながら目で答えを促す。

彼女はアイスコーヒーを頼んでいた(なんとなく、大人だ)





「ね、あたし前より綺麗になったと思う?」

「は?」

「あたしね、マルコと別れた後すっごく悔しくって」





ああ、だから見返そうと思ってそこまで綺麗になったのか?マルコのために。





「やっと自信ついたからまたこっち来ちゃった。まぁすぐ帰るつもりなんだけどね」

「マルコに会ってくるのか?」

「会うってゆうか、そこまで勇気ないんだけど」

「?」

「マルコの目の前をサササ〜ッて通り過ぎてこようかなぁと、優雅にね」





やっぱ勇気ないよねと苦笑するミアが凄く綺麗に見えた。見掛けも、中身も。





「声掛けられると思うぜ」

「はい?」

「マルコに」

「ま、まさか!」

「いーや、されるね」

「何でそう言いきれるのよ」

「そんなんミアが綺麗になったからだろ。…スゲー、綺麗になった」





にやっと笑って彼女を見ると

そこには顔を真っ赤にしているミアがいた。





「あ、ありがと」

「おう」





俺の胸の中を暴れる煩いモノには気づかない振りをして、ミアには平静を装って見せる。
でも今ならこのポーカーフェイスを崩してもいいんじゃないだろうか。
俺だって、1年前とはかわったからな、






(1年前みたいに、諦めるなんて、本当の阿呆だろ。)








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