ワンピ特殊トリップ


お母さんの遺品を整理していると、本棚の奥に隠されていた四角くて平べったい缶が出てきた。
それが去年お母さんと行った遊園地で彼女が買っていたものだと気付くのに、そう時間はかからなかった。

どうしてこんなところに、と首をかしげて本棚から取り出すと、中に何かが入っているらしいことがわかった。
お母さんの秘密の何かが入っているのだろうか?と思いながらおそるおそる開けてみると、中には見覚えのない手紙と紙の束が入っていた。

紙の束には日記帳・封筒には華へ、と書かれていた。

「これ……お母さんの字だ」

それに気付いて、あわててハサミを取りにいく。急ぎすぎて家具に体をぶつけたが、あまり痛くなかった。





「……よし、開けよう」

正座をして、ハサミと手紙を手に取る。
ドキドキしながら私は封筒を開けた。




華へ。
突然だけど、お母さん、あなたにずっと言えずにいたことがあります。
隠してたわけじゃないけれど、どうしても話せなかった。
だからその代わりに、いつかあなたが読むことを信じて、お母さんの日記をあなたに残すことにしました。
お母さんが自分のために書いたものだから、華にそっくりそのまま渡すのは、なんだか気恥ずかしいものがあるけどね。

これを読んで、あなたには見せてこなかったお母さんを知ったあなたが何を思うのかはわからないけれど、もしかしたら軽蔑されるかもしれないけれど、一世一代のお母さんの冒険を、あなたに見て欲しかった。きっとあなたの役に立つだろうから。
扉を開くかどうか迷ったときには、この日記のことを思い出してください。少しなら手助けもできると思います。
あなたにとっての悔いのない選択を、願っています。





手紙にはそう書かれていた。
冒険、扉、選択……。
何かの比喩なのか、そうではないのか。今の私にはわからない。
けれども、日記帳を読めば知れるに違いないということは、わかった。

先ほど以上に心臓が鳴るのを聞きながら、缶の中から紙の束を拾い上げる。

日記帳と表題されたそれはずいぶんとと色あせてしまっていた。いくぶん文字の形が崩れていることからも推測できるように、これはきっとお母さんが若い頃に書いたものなのだろう。
ホチキスで止められただけのその束を、いつのまにかしっとりと湿ってしまった指先で、ゆっくりとめくり上げた。




*prev next#
back to top
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -