04

 コナンが意識を取り戻した翌日。子どもの回復力はやはりすさまじいものがある。もうすっかり良くなって、ロックベル家の誰よりも元気になっていた。

 ウィンリィが各部屋の使い方やピナコの機嫌を損ねない方法などを教えて、三人と一匹で朝ごはんを食べている時のことだった。

 それまでコナンは彼女の聞き手に徹していたのだが、ウィンリィのマシンガントークが収まった一瞬の隙を見て、オートメイルってなに?と、尋ねた。どこかで拾って、気になっていた言葉らしい。

「オートメイルっていうのはね!すごいんだよ、もうすんっごくかっこいいの!デンのもね、オートメイルなんだよ!」

 ウィンリィが楽しそうに、身振り手振りも交えて機械鎧という筋電義肢の素晴らしさを力説する。

「ウィンリィ、ご飯要らないのかい?」

「……はあい」

 というピナコの一喝で、一旦は静まり返った食卓。コナンは気まずそうに身じろぎしたが、その目は知的好奇心に満ちあふれていた。

「食べ終わったらこっちに来な」

 と、ピナコが誘導した部屋には作りかけのものや完成品・部品など、ありとあらゆるものが並べられていた。

「かっ」

「か?」

 うつむいて震えるコナン。どうかしたのかとウィンリィが見つめる。

「かっけえええええ!!」

 コナンは興奮した様子で部屋を見渡した。
 初めて生き生きとした姿をみて、二人はホッとした気持ちになった。

「見たけりゃ見てな」

 とピナコは言って、仕事に取りかかる。
 その間コナンは目をキラキラと輝かせて、ピナコが仕事を終わらせるまで彼女の側を離れようとしなかった。
  その隣では、ウィンリィがピナコに教えてもらった事を必死で思い出しながら説明をしていく。

「オートメイルはね、生体電気っていうのをぶわーって増やして、それで、それで動かしてるの!あ、うんとね生体電気って言うのは、えーっと……"生物電気ともいう。生物に見られる発電現象をいう。生体電気という言葉はイタリアの生理学者L.ガルバーニによって最初に用いられた(1786)。彼はカエルの筋肉が2種の金属をつないだもの(電気ピンセット)に触れると収縮が起こることを発見し,その原因は生物電気であると説明した。A.ボルタは収縮は接触電位差によると反論した。後に,このような筋肉や神経は興奮すると活動電位を発生することが知られるようになった。生体電気現象は興奮性細胞,すなわち感覚細胞や神経細胞,筋細胞で顕著である。"っていうらしいんだけど、あたしまだよくわかんなくて……」

「ウィンリィ姉ちゃんすごいね、本の内容暗記してるの? オートメイルは人が出す電気を増やして動かすの? それから、オートメイルってどうやって形を作るの?」

「そう! オートメイル用にいろんな鉄とか、そういうのを混ぜて削りだしっていうのをやるの!」

「削りだしって、型に入れて作るんじゃなくて削るの?」

「削り出しはー、なんだっけなあ、”素材の加工において均一な塊から形を圧延を行わずに切削することで形を作ることである。広義には彫刻も一種の「削り出し」ではあるが、一般には機械の部品(機械要素)などを製作する場合を指す。
この加工の最大の利点は、圧延で発生しうる素材密度のむらや内部のひび割れなどといった問題を起こさず、可塑性に乏しい割れたり欠けたりする性質のある素材でも精確に加工できる点にある。反面、加工の手間はプレス加工など他の大量生産を前提とした生産手法よりも格段に手間が掛かる部分があり、当然加工コストを押し上げ、製品としての価格を押し上げる要因となる。
金属を削る時は、多大な摩擦熱が発生するため、冷却のため切削油や水などを流す必要がある。また、削り滓や粉塵の処理、騒音の問題もあるため、加工設備に関しても制約が多い。
おなじ金属加工の手法である「鋳造」と比べると高い寸法精度や表面の平滑性を得ることが可能であり、また鋳造で問題になる、冷却され凝固するまでに発生する金属結晶生成の差による部品強度の低下を回避することができる。応力が掛かる部品の製造では、強度が全体的に均一であるため、内部の密度差や傷などに伴い発生しうる応力集中で部品破損を起こすことが無い。
「プレス加工」のように金型を用意する必要も無ければ鋳造のように鋳型を製作する必要も無く、ある程度小さな部品であれば加工設備も小さくて済み、大量生産ではない部品の製造に於いては専用ジグを必要とせずに加工できるなどの利点がある。反面、同一部品の大量生産では物品の設計段階で加工しやすい形状に限定せざるを得ないなど、意匠性などを求め難い部分がある。”って言うんだって!」

「…………ええっと、削った方が不具合が起きないってこと?」

「たぶん!」

 オートメイルが大好きでたまらないウィンリィが、前のめりになって自分の話を聞いてくれる人物に対し、熱中しないわけもなく。8歳児の語彙力と専門書を丸暗記した知識から織り成されるマシンガントークに、コナンは感嘆の声を上げた。
 彼女の長々とした言葉の中から要点を拾い、要約してウィンリィに尋ね返すことで、理解していってるようだった。
 ウィンリィの言葉を止めるような真似はせず、うんうんと頷きながらどんどん理解していく様子には、ピナコも感心するばかりであった。

「どうせ私もウィンリィも毎日オートメイル尽くしなんだ。あんたも試しに勉強してみるかい?」

 一日を終え、三人と一匹で夕食をとっている時に、ピナコはコナンにそう尋ねる。
 この村で精神科を担当する医師は、現在外に出て行っている。
 彼が戻ってくる数日の間、様子を見がてら、好きなことをやらせてみるのも悪くはないと考えたのだ。

(wikipediaとkotobankより引用)


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