瀕死 | ナノ


▽ 07


怪我をしてから、私は私を訪ねてやってくる夜を歓迎し難く思っている。


申し訳程度に付いた窓からは大して外の様子を窺い知ることができないが、きっと闇がひしめき合っているのだろう。

そして私へ次々に飛びかかってやろうと、狙いを定めているのだ。

夜の帳が下がりきり、誰もが床に着いた頃、私はたいてい痛みで狂っている。あまりの痛みに耐えかねて吐いた回数を、私は既に覚えてない。鎮痛剤の効き目がヌルいのかもしれない。

唯一の救いは、獣のように喚きながら痛みをこらえようと努力していると、こんな真夜中にやかましいだろうに、リム先生がやってきて、そばにいてくれることだ。

微笑みながら、布団をポン・ポンとゆっくり叩いて私をなだめてくれる。怪我に響かないような、優しい振動で。

リム先生が来ると不思議なことに、それまでどんな痛みが身体を駆け巡っていたとしても、だんだん潮が引くみたいに治まって、よく眠ることができる。

私に飛びかかって身体のあちこちを突き刺していたものたちが、一匹、また一匹と、退散していく。

「ほら、もう大丈夫……よくがんばったね……しっかりお眠り……」

そして私は、ようやく夜の静けさというものに気がつくことができるのだ。

汗と涙によって肌に張り付いた髪を、リム先生が優しく剥がして、水気を切った暖かいタオルで拭いてくれるのがわかる。

私の耳元で早足に駆けていた心臓が、ようやく去っていく。痛みで痺れていた手足の感覚も戻ってくる。

優しく笑うリム先生に、私も微笑み返して、ゆっくりと呼吸を繰り返しながら、目を閉じた。




おやすみ、先生。

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