瀕死 | ナノ


▽ 09


本格的なリハビリを始めるに、全身をほぐして少し動けるようになってから、お風呂に入れてもらった。
流石にこれ以上身体を洗わないのは耐えられないとリム先生に訴えたのだ。
そうだね、女の子には辛かったね。と、リム先生は快く許してくれて、ノエルさんが私の入浴を手伝ってくれることになった。

脱衣所で、服を脱ぎ去る。服を脱ぐのも一苦労だ。床ずれのせいでできた擦り剥けと皮膚がえぐれた痕と骨折の痕らしきものが至る所に見えて、我ながら痛々しかった。

「わ…」
「あらあら、だいぶ筋肉が落ちちゃったみたいですね」

久々に脚をきちんと見ると、自分のものとは思えないほど枝のように細くなっていて、驚いた。細いということは女の私にとって嬉しいことだけど、流石にこれはない。
ノエルさんいわく、使わなかった筋肉が萎縮してしまっているんだとか。
また、関節の可動域も狭まっていて、思うように動かない。
ベッドの上でも動かせるところはなるべく動かしていたが、やはりまともな日常生活を送っていなかった分、全身が衰えているようだ。

ノエルさんに大部分を手伝ってもらいながら、隅々まで洗う。
きちんと泡立つまでに3回もシャンプーをしなければならなかったのには驚いたし、長い間刺激していなかった頭皮をほぐすのは結構痛かった。なかなかの労働のようで、ノエルさんには少し申し訳なく思ったが、申し訳なさついでに、肌にのさばっていた体毛も剃り落としてもらったわ私は結構図々しく成長してしまったのかもしれない。

危険なので湯船には浸かれなかったが、一ヶ月前ぶりのお風呂で心が軽くなった。

「ふうう……」
「気持ちよかったですか?」

ノエルさんが丁寧に髪を乾かしてくれる。
世話好きな人でよかった。

「うん、すおく。あいあと」

舌足らずなのは、私の舌が物理的に存在しないせいだ。こんな状態で敬語を使ってもわけがわからなくなるだけなので、遠慮なしにタメ語を使わせてもらっている。いちいちハンター語でやりとりするのも面倒なので、多少の意思疎通なら口頭で行う。
自分の滑舌の悪さに内心発狂ものだが、仕方ないのだと割り切るしかない。

「ふふ、それはよかったです」

ノエルさんは微笑んで、車椅子に私を乗せ、リハビリルームに連れて行ってくれた。

「おお、見違えたね。とても可愛らしい」

リム先生は微笑んで、ピカピカになった私を褒めそやす。
どちらかというと今の私はガイコツに近いかもしれないので、なんとも言えない気分になったが、リム先生の笑みに癒されたので素直に笑っておく。

「さて、今日からはリハビリに励まないとね。ちょっと大変かもしれないが、ハルちゃんなら我慢できるさ。それから、手話の練習もしよう」

「はあい」

『どうかお手柔らかに、よろしくお願いします』

「もちろんさ」

そうして私の、新たな地獄の日々が始まったのだ。

prev / next

back to top
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -