05
「じゃ、今日の仕事の段取りを説明する」
事務所に入り腰掛けながら話し出す。
俺が地図を机に広げればちょうど二人が腰掛けたところだった。
「目的地はここ、緑のとこ。んで、現在地がここな」
トントンと指で地図を叩く。
「ちと遠いけど、俺とニコは走りでいく。ウォリックは車で着いてきて」
「おっけ」
ニコが頷いたのを確認して立ち上がる。
「まってまって!私は?」
「アレックスは今日はお留守番!今回のは危ないから」
「ごめんなー、アレッちゃん?」
そう、としゅんとしながら返事をしたアレックスの頭をウォリックがなでる。
俺も負けじとアレックスの手を握った。
頭を撫でないのは身長が小さいからとかじゃないからな!
ニナだったら楽に撫でられるのに、くそっ。
「んじゃ、行きますか!」
二人との仕事久し振りだなぁ、なんて暢気に考えていた俺はこの後この仕事があんなに大変になるなんて思っていなかったのだ。
「ニコラスはぇえよ!置いてくなって!」
『お前が遅いのが悪い』
「あ!?なんだって?走ってっと手元が見えねぇんだよ!つかお前どうやって俺と会話してんの?」
よく考えてみれは変な話で、こいつは俺の前を走っていて口元が見れないはず更に俺の声が聞こえてないはずだ。
なのにこいつはなんとなしに会話しているようで、むしろこいつの手元が見えないせいで手話がどうなってるのか分からなくなって困っているのはこちらである。
ニコラスもしや後ろに目ができたか!
なんてアホなことを考えてしまうくらいにはよくわからない状況である。
『うるせぇ、バカ野郎』
「あ、今貶しただろ!それは雰囲気でわかったかんな!」
「ッチ」
舌打ちは普通にすんだな…
...ニコラス、恐ろしい子!
『速度あげろマリオム』
「ん、どうかしたのか?そんなに急いでどうするんだよ、ウォリックもついてきてねぇし」
『お前にはまだ見えんだろうが、先の方の動きが妙にざわついてる。何かあったと考えた方がいい』
なんだ、今から仕掛けようって時に。
タイミングの悪い。
そう思いながらも走る速度を少し上げる。
俺にはサングラスのせいでよく見えちゃいないが、ニコラスの見えすぎる程の目にはきっと騒がしい情景がありありと見えているはずだ。
『マリオム薬はいつ飲んだ』
「四時間前」
『激しい運動だと持って切れるまで30分てとこか、変に意地張るんじゃねぇぞ』
眠くなる薬は仕事の直前に飲むことも出来ないので前から飲むのが普通だ。
反動が強いフェモリラならなおのことそうである。
普段の状況であれば薬の効果は六時間だ。
しかし激しい運動をする場合はそれの4分の1しか持たなくなる。
理由は単純で、薬で抑えている細胞が脳の命令で一気に動き出そうとするからだ。
薬が効いている間は激しい運動をしていない限り自身の回復力が上がるようになってはいるが、それもそれほど効果を実感することはない。
俺の場合一度行動を始めてしまえばそれは死へのカウントダウンが始まるからだ。
強すぎる力は体を内部からズタボロにする。
それを抑えるために服用しているフェモリラも効果が切れた一時間後には確実に失明する。
俺にとっての闘いは死と隣り合わせ。
これしか知らないまま大人になったから選択しなんざないも同然だったが、今のところ死ぬというコマンドは目の前に現れない。
生きる。
それしか俺の頭には表示されない。
明らかなバグだが、それも面白いじゃないか。
生き残ってやるよ、意地でもな。
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今回はニコ寄りです!
前回までニコが空気だったのでニコと主人公の絡み!
ニコかっこよすぎてあんま表現出来てない気がする...むずかしいです。
更新亀ですが気長にお待ちください。