03
RRRRRR!
大音量で電話が鳴る。
遅くまで起きていたことがたたり、深い眠りの海をさ迷っていた意識が一気に深海から引き戻されるようにして覚醒した。
遅く、と言ってもこの場合括弧付きで、あくまでも通常よりもと言う注意書が書かれるが。
部屋は暗い。
昼間でも真夜中のように日光を一切入れない部屋は自分用にと作られた特殊な物だ。
RRRRRRR
覚醒しきるまでの少しの間放置していた電話は尚も鳴り続ける。
俺は頭を一度クシャクシャとかき混ぜてからその電話を取った。
「もしもし、あー、こちらblackleg事務所。ご用件をどーぞ?」
『―まったく、まぁだお前はそんなふざけた店名名のってんのか?』
「なんだ、親父か。お説教は聞きあきましたぁ!間に合ってまーす!」
馴れない敬語なんて使って損した、なんて心のなかで思ったのは電話から聞こえてきた耳慣れた声のせい。
声の主の名前はチャド・アドキンス。
ものごごろつく頃に捨てられた俺を拾って成人するまで育ててくれた血の繋がらない俺の親父だ。
自分には比較的ルーズなくせして身内には小舅の如くうるさい。
そんなんだからお袋に愛想つかされるんだぜ、なんて思うが言ったら殺されるから死んでも言わねぇ。
『そうじゃねぇそうじゃねぇ、今日の電話はそーいうんじゃねぇんだよ。』
親父の声が一瞬で仕事の時のピリッとした声に変わったのを俺は不思議に思った。
親父は俺には警察関係の、というよりも親父が担当するような黄昏種系の仕事を回そうとしない。
原因なんて簡単だ。
俺が黄昏種だから。
この世界で、この町で、黄昏種に関する事に首を突っ込めば格段に死亡率ははね上がる。
それは一般人(ノーマル)も黄昏種(アブノーマル)も変わらない。
少しだけ黄昏種の方が頑丈だから、そこを勘違いした馬鹿が真っ先に犬死にする事を親父は一番よく知っていて、俺がそーいう馬鹿にならないようにしているのだ。
親父はああ見えて結構な心配性だから。
そんな親父が俺に仕事を吹っ掛けてくるなんて...どこかに頭でもぶつけたのか?
「なんか...あった?」
『いや、ちょっとな。便利屋だけだと手が足りなくなりそうな事件が起こってる。それに協力して欲しいっつー話なんだがな...』
やはり歯切れの悪い親父に俺は違和感を覚えながらも話の続きを促した。
『まぁ、なんだ、それがちょっと厄介な事件に成りそうなんだ』
「厄介ってどんな?つか、警察の仕事って大抵厄介だろ」
『...黄昏種を隠れ蓑にでけぇ組織が動いてる。その組織が問題でな…上の馬鹿息子が関わってる。そーなると大っぴらに動けねぇ上に、主戦力が黄昏種だ。警察にゃ少しばかり荷が重いっつーやつだ』
「確かにそりゃ分が悪いな。便利屋だけだと組織を潰せるかは五分五分ってとこか...」
ニコラスが無理をすれば潰せないことの方が確率的に低くなるだろうが、アイツの無理は体が壊れる直前までセレブレを服用することで成り立つ危うい橋だ。
フェイカーの宿命と言うと格好はいいが、ドーピングは命取りに成りかねない。
腐れ縁の間柄でもそんなことで死なれれば寝覚めが悪いというもので。
「オーケイ、その仕事受ける。報酬は口座に振り込んでくれればいいよ。親父は今回は殆ど関わらねぇんだな?」
『あぁ、健闘を祈る。怪我の手当てなんざ俺はしねぇぞ馬鹿息子』
「精々死なねぇように気をつけるさ」
軽口を叩いて電話を切ろうとすれば電話越しに小さめの声で聞こえた『息子!?』と言う声に笑ってしまった。
ガチャンという音と共に俺の笑い声が部屋に響く。
恐らくあの声は最近異動してきたという新しい部下だろう。
確か親父はそいつのことコーディとか呼んでたか。
部下の前でこんな電話してよかったのかは疑問だが、俺がどうなる訳でもないからと放っておくことにした。
部屋の隅に置いてあったファクシミリがピーと鳴いて紙を刷り始めた。
恐らく仕事の詳細だと当たりをつけて音を立て続けるファクシミリに興味を失った俺はいつも通りフェモリラを服用すると再び眠りに旅立つのだった。
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チャドさん出たよー!やっとだよ!
ここからガラッとおんにゃのこゾーン抜ける予定。
便利屋+モンロー組でいけるといいな。
原作ここにぶちこもうかとも思ったんだけどまだ先が見えない原作をぶちこむのが怖かったので断念。
オリジナルで進める予定です。
しかしオリジナルストーリー考えるの大変そうで今からgkbrしてます。
ちなみに主人公の事務所の名前blacklegはイカサマ師とかの意味があります。
競馬とかの時に使うらしいですが、これ系の単語を調べた時にこれが一番しっくり来たので拝借しました。
英語はあまり得意ではないので変なところはご容赦ください(汗)