その日もここ最近と同様に近藤くんに送ってもらっていた。
少し違ったのは時間である。
現在時刻は午後6時52分。
いつも帰っている時間よりも三時間ほど遅い。
部活動に所属していない私からすると珍しい時間だ。
いつもなら近藤くんが部活のある火曜日と木曜日には送ってもらわずに一人で家へと帰っていた。
近藤くんは毎日送りたいと言ってくれていたけど、剣道部部長として出来ないと分かっていたのだろう、苦虫を噛み潰したような顔で渋々頷いて、気をつけてね。と見送ってくれていた。
しかし今日の昼休み珍しく話しかけてきた土方くんはどこか居心地悪そうに顔をしかめて
「部活...つきあってくんねーか。」
と言ったのだ。
話しを聞いてみれば私を見送った後の近藤くんはソワソワとしていて身が入らず稽古にならないと渋い顔をしていた。
私はと言えば、言うか言うまいか心底悩んだ結果、私に頼み込むという結論を出した土方くんを無下にも出来ず、しばらく考えた後肯定の言葉を発していて。
間近で見たことのない剣道を見られるよい機会であると思うことに決め込んだのだった。
そんな経緯があってすっかり暗くなった道を2人で歩く。
恋人同士でないからと2人の手は絡められる事はなく、それでいて只の知り合いのように距離があるわけでもない。
友達のようにからかいあう様なこともない。
不思議な関係で不思議な距離がそこにはあった。
「今日、部活つきあってくれてありがとな!」
「ううん、別にいいよ、いつも送って貰ってるし。」
これは本心からで、私のために少しだけ模擬試合中心になった練習内容は迫力があって楽しかったし、
いつもはどこか頼りなく少しだけ抜けているように見える近藤くんは、竹刀を握った瞬間に表情が引き締まってかっこよく見えた。
沖田くんや土方くんを見守りながらニコニコと笑う姿はいつもと何も変わらないのに、不意にそんな表情をするものだから胸の辺りがきゅっとなるのを感じた。
「今日の分、言ってもいい?」
そう言った近藤くんにこくりと頷く。
私はこの後に続く言葉を知っている。
「好きです。俺と付き合って下さい。」
分かっていた。
ここ毎日続けられる愛の告白は回数で言えば何回目か。
そろそろ慣れてもいい頃だとは思うのに、全然と言っていいほどなれる気配は無くて、むしろ回数を重ねるにつれて小人が胸の扉を叩く音が大きくなってしまっている始末だ。
実を言えば私はつい最近までこの小人の存在に気がついていなかった。
いや、気づかないようにしていたと言った方が正解かもしれない。
それを気づかせて背中を押してくれたのは他でもない妙ちゃん。
『百合ちゃん、気を使ってるのは嬉しいし、分かってる。でもね、もう少し素直になってもいいんじゃないかしら。』
そう言って私の髪をすくように撫でた彼女は優しい瞳をしていて、頭を撫でる手はどこまでも暖かかった。
「答えはいつでもいいよ、返事くれるまでいい続ける。」
「もう、言わなくていいよ。」
そう口に出せば近藤くんは驚いたようで泣きそうな顔をして私を見た。
「好きです。私と付き合って下さい。」
これ、言ってみたかったんだ!と私が笑えばぽかーんと口を開けたまま放心している近藤くん。
恐らく私が、もう言わなくてもいい。なんて言うものだから振られるとでも思っていたんだろうが驚く顔が可愛くてクスクスと笑ってしまった。
「で、どうかな近藤くん。お返事くれる?」
「よ、よろこんで!おねがいします!」
「よかったぁ...、これで振られたらどうしようかと思ったよ。」
ほっと胸を撫で下ろして言う。
ここで振られたら私は一生男性不信になってたよ、なんて冗談を言えば近藤くんが真面目な顔で俺が振るわけないだろ!と返してくるのでちょっと嬉くてまた笑う。
「それとさ、俺好きって言うのは止めない。付き合う前も後も、俺は百合ちゃんの事ずっと好きだから、言うの止めんのなんて出来ねーよ。気持ちで押し潰されちゃうからね。」
なんて笑った近藤くんが何時もより数倍かっこよく見える。
一ヶ月ほど前までは何とも思ってなかったくせに、驚くくらい早く脈打つ心臓に私は、あぁ、もう末期だな。なんて思うのだ。
病的なまでに愛しい-------
本当にお久し振りです!
一ヶ月以上の放置とは…、申し訳ない限りです。・(つд`。)・。
せっかく更新強化企画に決定したのに全く進まず...情けない。
忙しいとか何かと理由をつけてサボってしまう悪い癖ですね (゚Д゚;)
頑張らねば!o(`^´*)
このシリーズ思い返して見ると一年以上放置してたんですよね、恐らく。
確認してないのでもっとの可能性大なんですけども(;^ω^)
これはいかん!ということで最後まで書いて完結させたんですが、締めがイマイチな感じに…(泣)
どなたか文才分けて下さい(笑)
ここまで読んで下さり有難うございました!
今後とも拙い文章ではございますが、お付き合い頂ければ幸いです!
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