「紅茶とフルーツジュースどっちがいい?」

「かるぴすがいいでさァ」

「コーヒーくれ、近藤さん」

「トシ達に聞いてる訳じゃないんだけど!百合ちゃんに聞いてんの!」


俺トシ達のパシりじゃないからね!?とツッコミを入れる近藤くん。

そんな彼は実は彼ら3人の中では同じ部活の部長という最も高い地位についているはずなのだがこの会話を見ている限りはそうとは見えない。

まぁ、彼ら2人にとってみれば少しふざけて近藤くんをからかっているだけに違いないのだから気にする必要もない。

さらに言えばこのやり取りはここ数日見慣れた光景であるし、特にすることもなく答える。


「んー、フルーツジュースにしとく」


最近私は屋上でお昼を食べるようになった。

それというのも目の前の近藤勲という人物が原因で。

前までは教室で妙ちゃんや九ちゃんたちと食べていた。

しかし近藤くんが一緒に食べたいと言ってきて、それを断固拒否した妙ちゃんにより私は供物のように彼らに引き渡されたのだ。

それも何日か経つと慣れてきて特に気にもしなくなったのだが。


「はい、フルーツジュース!」


にかっと音が聞こえると錯覚してしまいそうなほど笑いなから渡してくる

私はジュースのパックを受け取りながら小さめにぼそぼそとお礼を言って膝の上にお弁当を広げる。


「今日は何がいい?」


そう聞くのもこれで何回目か。

私はジュースのお礼の名の元に毎日少しだけお弁当のおかずを近藤くんへと分け与えている。

単に親切心からであろうジュースを受け取って、そのお礼として彼に唐揚げを分けてあげたのが最初。

そこから味をしめたのかは知らないが彼は昼食の度にジュースを持ってくるようになった。

そして毎回美味しい美味しいとおかずをほおばるのだ。


これはギブアンドテイクであると自分に言い聞かせている。

断じて恋人同士の相互関係等ではない。

むしろこれは餌付けであると。

それにしては毎日美味しいと笑ってくれる近藤くんの笑顔が嬉しくて、胸の辺りが少し痛む。


「今日は玉子焼きもらっていい?」

「ん。」

「ありがとう。百合ちゃんの旨いから癖になるんだよなー!」






あ、と屋上から教室へ戻る途中で近藤くんが声を上げた。

何かと思って顔を横へ向ければ近藤くんと目があう。


「今日の分、言ってなかったわ。」

「...?」

「百合ちゃん、好きです。俺と付き合って下さい!」


私は驚いて一瞬固まると「...なにそれ」と返した。

近藤くん曰く毎日言うことに決めたらしいその言葉。

決めたって、私からしてみれば勝手に決められても…という話なのだが、うーんとしか言えない


「いつまで続けるの?」

「期間?んー、特に決めてなかったけど、強いて言えば百合ちゃんが俺の事嫌ってくれるまで、かな?」

「私、近藤くんのこと好きなわけじゃないけど。」

「嫌いと好きじゃないは違うだろ?だから君が俺を嫌いって言うまでいい続けるよ。それまでは諦めない!」


なんとも言い切りました風に清々しく言った彼に目眩がした



お昼休みはあと五分






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