「近藤くん、私下校中なんだけど!」
「ん...?知ってるぞ!」
「知ってるぞじゃないよ!付いてくんなつってんの!」
それを聞いて近藤くんはうんうんと唸りだした
ぶつぶつと俺には百合をストーカーから守る使命が…とかなんとか言っているのが聞こえる
自分自身がストーカーで有ることは分かっていないらしい
まぁ、ここまで堂々と付いてくるこの人物をストーカーと呼んでも良いのかは定かではないが
「最近近藤くんのせいでご近所さんに心配されるんだけど」
「む!やっぱ俺以外にも百合のストーカーが...」
いやいやいや、お前の事心配されてるだけだから!とも言えず私は思わず黙りこんでしまった
近藤くんが私に告白してきた三日後くらいから近藤くんは私の下校に付いてくるようになった
彼曰く帰り道は危ないとのことだ
今日でそれも一週間目になる
近藤くんは私を家に送りおえると家に上がろうとするでもなく普通に帰っていく
確かに安全性から考えれば送ってもらうのはありがたかった
しかしこれでは好意を利用しているような気がしていたのも確かで
「話し変わるんだけどさ...」
「ん?」
「近藤くんは何で急に私に乗り替えたの。」
乗り替えた、なんて言い方は少し間違っているかもしれない
けれどこれ以外の言葉が思い当たらなかった
ずっと妙ちゃん一筋だった近藤くんが切っ掛けもなく急に私を好きになるなんて思えなかったから
「何でって聞かれると答えにくいけど...」
近藤くんはそう言って少し難しそうな顔をする
「強いて言えばハンカチを貸してくれた時あったの覚えてる?」
「遠足の時だっけ…?」
「そうそう!俺あの日体調悪くて、でもお妙さん全然手加減してくれなくてボロボロになっちゃって。そん時お妙さんのこと止めて濡らしたハンカチ貸してくれた。それがなんかすげーここにキタんだよ。」
胸を拳でトントンと叩く
少し照れ臭そうに笑った近藤くんに反射的に私も笑い返した
正直言うと泣きそうだった
近藤くんが手軽な身代わりとして私を選んだのだと言わなかったからそれに対する安堵で泣きそうだった
実際問題こんなの口だけでなんとでも言えるけど
近藤くんだったら信じられるような気がしたから
「...単純。」
かわいくない
全然気のきいた言葉が言えなくて
こんな自分はあまり好きじゃない
「それでいいんじゃないかな。人を好きになるのなんて結構ちっちゃい事が切欠だと思うよ。」
ま、俺そんな頭いい方じゃねーから偉そうなこと言えないけど。と特に気にする風でもなく笑った近藤くん
一瞬私の中の何かしらが切れそうになった
理性とか外聞とかそう言う何か
思い止まることが出来たのはやっぱり妙ちゃんのおかげかもしれない
「だからさ」
「?」
「百合ちゃんにもちっちゃい切欠で俺の事好きになってもらう!」
あまりにも真剣な顔で言われたその言葉
「...ふ、あはははは!近藤くんて実は結構な馬鹿!?」
「なっ!俺真剣なんだけど!馬鹿じゃなくて前向きって言って言おうよ!」
夕日に照らされて
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