どうも皆さんこんにちは、百合です。
私は今とてつもなく教室へと行きたくない衝動に駆られています。
というわけで、学校にきたはいいものの屋上へと直行しているわけです。
何故?
そんなの決まってるじゃないですか。
昨日うちのクラスの男子がクラス全員の前でかましやがったんですよ。
何をだって?
そりゃもう大胆な“愛の告白”と言う名の私にとっての『公開処刑』を
あの時、私は現実を受け入れられずになんとも間抜けにポカーンとしてしまった訳だが今考えるとあの時一発でも殴っておけば良かったと思う。
私に公開処刑を執行した男子
ゴリラにとてつもなく似た容姿を持つ近藤勲という男子に一発殴ったって罰は当たらないはずだ。
だって、私は近藤くんに惚れられるような事は何もしてないし、
あまり仲が良いと言うわけでもない。
強いて言えば、近藤君が前まで情熱的に(?)愛の告白及び(彼曰く)恋の狩人をしていた志村妙ちゃんと仲が良く、近藤君の駆除・・・じゃなかった、撃退に参加していた程度だ。
そんなことで惚れられるなんて事はないだろうし、近藤君の思考回路はどうなっているんだろうか。
やっぱり、容姿だけじゃなく思考回路までゴリラなんだろうか。
そこまで考えたところで、百合の背中から声がかかった
「オーィ、篠崎こんなとこで何サボってんだァー」
間延びした独特の口調
なんともやる気が無さそうな声
振り返るとそこには自分の担任だとは認めたくない死んだ魚のような目をした教師が立っている
「銀八せんせだけには言われたくないです。」
「俺はいいんですゥー。一時間目は授業ないしィー。」
「そうですか、でも学校内が禁煙だからって屋上で煙草吸いにきたのバレバレですよ。」
「煙草じゃありません、レロレロキャンディーですゥ。」
どんなに頑張ってもレロレロキャンディーから煙は出ませんよと言う突っ込みを飲み込んで空を見上げる
雲ひとつ無い真っ青な空
それが今の自分の心とはなんだか対照的で笑が零れた
近藤君に告白されて嫌なわけじゃなかった
近藤君はストーカー行為以外は普通だし、良い人だと思う
特別好きってわけじゃ無いけど、好きな人の部類
だけど告白を断ってしまったのは、妙ちゃんの事があったからで
私は妙ちゃんが友達としてすきで
近藤君はまあまあ良い人だと思っているわけで
近藤君のストーカー癖がなければ喜んで応援したのにな・・・
なんて数日前まで思っていた訳だ
それが急に私に告白?
妙ちゃんの事が無ければ、きっと突然の事でも良い返事をしていたかもしれないけど
そう
妙ちゃんの事が無ければ
私は自分よりも妙ちゃんが大切だ
私の世界は妙ちゃんで出来ているといっても過言ではないと思う
理由なんて簡単
小学生のとき、引っ込み思案だった私は他に漏れず虐めを受けたことがあった
たった数日間だったからか、親にも担任にも気が付かれなかったけど
私にはその数日間が死ぬほど辛いものだった
それを払拭して私をそれから救ってくれたのが妙ちゃんだった
『オイ、目障りなんだよ・・・さっさと歩け』
ドカッという効果音と同時に男子に蹴りを入れられる
小学生と言えども男子と女子だ
やはり蹴られれば痛い
私は泣きそうになって目に涙をためてその男子を睨んだ
『ンだよっ、その目。殴られてーのか』
男子が腕を振り上げる
めいいっぱい上げられた腕
それが太陽に被って私に影をおとす
すぐに来るだろう痛みを覚悟してぎゅっと目をつぶった
だが、いつまでたっても痛みを感じることはない
不思議に思い硬くつぶっていた目を開ける
そこには青ざめる男子と綺麗な女の子が立っていた
それが妙ちゃん
ありふれた少女漫画のような設定
自嘲気味に自分の口から笑が零れるのを感じる
後ろから「どうかしたかー。」なんて声が聞こえるけど
「なんでもない、授業にもどろうかなーって。」と適当に返して立ち上がり足を向けるのは教室
この学校の教師は大抵が適当だから、テキトーな言い訳をすれば授業をさぼったってきつく言われることはない
まぁ、限度と言う物はあるだろうが
そんなことを考えていると教室についてしまった
ガラガラと扉を開けるとアッハッハという豪快な笑い声に
一時間目は数学だったかと思い出し自分の机に戻り教科書の準備をする
「おなか痛かったので保健室いってましたー。」というさぼりの正当化という名の良いわけも忘れずに
やっと今日の授業が終わった
なんだか気持ちが憂鬱だったせいか授業を終えた今では朝よりも気持ちが沈んでいる
そんなとき後ろから声がかかった
「百合−昨日の、考えてくれた?」
「えーと、・・・・」
私は困り顔で答え詰まる
「・・・・ごめん・・・ね?」
「百合!謝るなら付き合ってくんねー・・・ウソウソ・・冗談!だからそんな申し訳無さそうな顔しちゃだめ!」
そういう近藤君が私の頭をワシャワシャと撫でて
わたしはもっと申し訳なくなって眉を下げながら俯いた
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