彼
しっとりと湿った空気が部屋を支配する
充満する汗の臭いは決して青春の結晶なんかではなくて
醜い欲望と本能の臭いだ
ぐちゅ...ぬちゅ...
音が響く
「うぁ...や、め...」
どうしてこんなことに成ったんだろう
僕はどうしてこんな状況に置かれている?
自問自答を繰り返しても出てくる答えはあやふやな物ばかりで
僕は男
そして今僕のうしろで僕自身を弄っているのもまた同じ男だ
こんなことになるはず無かった
「どうして止めなくちゃいけないんだい?」
君のこれはこんなに悦んでるのに、と付け加えた彼は不適に笑う
「かじ、さっ...」
「なんだい、ユキくん?」
僕の自身に与える刺激に緩急をつけながら僕に答える
僕の方は加持さんに衣服の全てをひんむかれ浅い呼吸を繰り返しているのに対し
加持さんの方は服など一切乱れておらず(まあ、いつも服装が乱れて居るじゃないかと言われればそれまでなのだが)
大人の余裕と色気が感じられて
...ずるい
「ず、るい」
「こりゃまたどーして?」
加持さんだけ服を着て
僕の反応を楽しむように余裕のある笑みを顔に浮かべて
これじゃあ弄ばれる玩具のようで嫌だ
それが僕の本心だった
この言葉に込められたそんな意味を理解出来る訳もない加持さんにまた僕は恨めしさを感じる
それは焦燥感だったのだろうか
今まで生きてきた中では感じた事のない感情
「ぼく、だけ...服...いや、んぁ!」
急に強くなった刺激にびくんっと身体が跳ねて変な声が出た
女みたいな声は自分でも聞いたことのない声で
自分が自分でなくなったような妙なきぶんになった
実をいうと僕と加持さんは恋人という関係で
特にsexをしてはいけないと言うわけではない
恋人というものはそう言うことをする物なのだと学校で教えられた最低限の知識で分かっていたし
特にそういう行為に対する偏見を持っているつもりは無かった
だが
初めて出来た恋人は男でしかも16も年上
男同士でsexなんて思いもしなかった
キスはした
だけどそこから先はすっぽりと抜け落ちたみたいに僕の頭の中ではなかったのだ
ほんの出来心だったのだ
一緒に寝ましょう、なんて
加持さんがOKと言って冗談だったはずのそれは
いとも簡単に叶えられてしまったのだ
「君がいけないんだよ?せっかく我慢していたのに。」
と言われた時には既にベッドの上に押し倒されていて
着ていたはずの服は加持さんの手から逃げようと必死になっているうちに脱がされてしまっていた
加持さんはあのあと僕の言葉に従い服を脱いでくれた
少し、本当に少しだけ嬉しかった
絶対に本人には言わないけど
お尻がムズムズする
これはなんだろうか
「....んぅ..あっ…」
「お尻、弄ってほしいの?ユキくん」
「わかっ、ない」
じゃあ、といって伸ばされた手がお尻の輪郭をつーとなぜる
爪の先で何度か確認するように蕾をつついていた指がゆっくりと蕾の中に入って行くのがわかった
武骨な指がお腹の中で蠢いている
それは初めての出来事で気持ちいいとかはよく分からなかった
ぐちゅ
卑猥な音を立てるそこは武骨な指を三本も飲み込んでいた
時間をかけてじっくりと解されたそこは十分過ぎるほど湿っていて
「ユキくん、いい、かい?」
ぴとり、蕾に当てられた熱に身体が跳ねる
こくこくと頷いてみせるとゆっくりと、本当に少しずつそれは僕の中に入ってきた
「う...」
「痛いかい?」
僕は首を横に振って否定する
本当は痛い
でも、なんだか幸せだったから
「すぐ気持ちよくしてやっから、」
と言った加持さんが動き始めた
最初はゆっくり、段々速く
指とは比べ物にならない質量に息が苦しくなって
それすらいとおしく感じるなんて僕はおかしくなってしまったのだろうか
「んぁ!あっ、ふっ、おかしくなっちゃ!」
「いいよ、おかしく成りなさい。」
そう低く甘い声で囁かれて僕は果てた
耳元で小さく加持さんのうめき声が聞こえたから彼も果てたらしい
彼は律儀にもコンドームを着けていたようで
よかった、なんて思いもしないところで彼の優しさを感じて僕は意識を闇に落としたのだった
彼は恋人
僕の優しい恋人
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裏処女作が男主とは思ってませんでした(笑)
表でも男主書いたことないのにね(汗)←
でも加持さん好きすぎて...
もうすぐQやるので楽しみです!
裏は初めて書くので緊張しましたが
ここまで読んで頂きありがとうございました!
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