来る途中、スクーターに乗ったぽっぽと会って、そこまで必死に走っていた私をぽっぽはスクーターに乗せて走り出した。
基地へと着いてやっと一息つけると思っていた時―
「カレ牛撤退!」
ぽっぽが叫んだかと思えば私は脱ごうとしていたヘルメットを押さえつけられ再び被せされていた。
ぽっぽの後を追いかけてきたあなるとじんたんによって何かしらの誤解は解決されたようだった。
かわいらしいウサギのキャラクターの描かれた日記帳の表紙。
ぱっと見は日記帳よりも唯の手帳だと言われた方がしっくりくるそれを四人で覗き込む。
「じゃ、いくぞ」
じんたんがそう声を掛けた。
コクリ、つばを無意識に飲み込む。
ここまできて何を緊張しているのか。
その問いは誰も答えてはくれない。
ぱらっ
じんたんの指が表紙を捲った。
2がつ12にち くもり
きょうはみんなとあそびました。
おもしろかったです。
ぺらっ
2がつ14にち はれ
きょうはみんなとあそびました。たのしかったです。
あまり上手いとはいえない字で書かれたそれにみんなでため息を吐く。
殆ど同じ文章。違うのと言えば、楽しかった、とか、面白かったの部分だけ。
まぁ、それも彼女らしいと言えばそれまでだが。
「あ、ここちょっと違うじゃん。」
あなるが日記を指差して言った。
「今日、遊んでいるときに転びました。痛かったです。」
文字の横には丁寧にウサギが絆創膏をつけた絵まで描かれている。
「ここもちょっと違うぜ?きょう皆でじんたんのお母さんのお見舞いに行きました。」
「そういえば、みんなでゾロゾロいったよね…」
昔のことはまだ鮮明に思い出すことが出来る。
じんたんのお母さんが病気になって、それをお見舞いに行って―
「じんたん、花火っ!」
「そうだ、みんなで作ろうって…」
ぱらぱらとページをめくれば少しいったところで手が止まった。
4がつ2にち
皆ではなびをつくろうってきめました!
むずかしいと思いました。
でもがんばります。
「俺のかぁちゃんの為に…」
本当にこれがめんまの願いなのか。
確信は持てなかった。
けれど一気に「願い」「花火」「手紙」という単語が私たちの中で繋がったことは不思議なまでの自信をもたらす物だったことに、違いはないのだ。
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