ガチャ
俺はいつものように友人の家のドアを開け、中に入ろうとした
「ありがとうございました!」
虎へ向かって勢いよく下がる頭
元気な声が部屋の中に響く
男にしては高く、女にしては少し低めの声は耳に心地よい
声のする方向を見れば小学生ほどの少年だ
自分のいる方向からでは全体を伺うことは出来ないが背の小ささと声で判断するに声変わりをしていない少年だとあたりをつけた
「おぅ、気にすんな。・・・っと、かおるか、早かったな。」
前半は虎の前にいる少年へ、後半は俺に向けた言葉だ
今日は虎から携帯へと連絡があり呼び出されたために通っている図書館から虎の家へと向かった
ここからそれほど遠くはないので、自分の家から虎の家に向かうよりも時間がかからなかったのだ
「虎、何かあったのか?」
「面白ぇ奴と会ったからよ、お前にも紹介してぇと思ったんだ。」
「そうか。」
虎が言う面白ぇ奴と言うのは十中八九虎の目の前にいる少年のことだろう
少年はというと俺と虎の会話をぽかーんと言葉を発することも無く見守っている
真っ直ぐな黒い瞳に見つめられ
無意識のうちにその瞳に吸い込まれるように近づいて俺はその少年の頭をなでていた