その少女の正義
「レイさん!・・・・、あれ?またどっか行っちゃったかー。」

「本当よ、チカちゃんが来るときくらいいればいいのにねぇ?」

「いいよシャッキー姐さん、今日は別にレイさんの顔見に島寄ったわけじゃないし。でも、何処で油売ってんだか・・・」




チカはハァ・・・と息を吐き、言葉を返したシャッキーに礼を言い踵を返した

チカの着ているマントが風にバサッという音を立てて靡く

そのマントにでかでかと書いてあるのは“正義”の二文字

象徴的な長いマフラーとポニーテールの髪が揺れ、どんどん去っていく

窓からその背中を見送るシャッキーは嫌な予感を感じ、眉間に皺を寄せていた











「一番グローブのオークションハウスで人魚が競り出されるらしいぜ?」

「今回の目玉って巨人族だって聞いてたんだが本当なのか!!!」

「あぁ、噂によると始まる数時間前に連れてきたやつがいるんだと。」



・・・チッ・・・

チカは人攫い屋の話を小耳に挟み舌打ちをする

前々から目障りな商売を本部の近くで行われているのは知っていたが、どうも手出しが出来なかった

だが、何故か兄が捕まった位から自分への警戒(センゴク元帥曰く、うちの血筋は何を仕出かすか分かったもんじゃないから)

とココに対しての警備が手薄になっている事を逆手にとって目障りな商売を潰しに来たという訳だ



ニヤリ

笑いが漏れた

中将になってから一番初めにやりたかった仕事

警備が厚くてなかなか手出しできないまま何度も大将への誘いを貰った

が、これ以上の地位があれば自分への拘束が増える事になるため蹴って蹴って蹴りまくった

まぁ、自分の祖父と同じことをしたまでなのだが

やっと潰せると思うとイヤでも笑みが増すという物だ









    ズッドーン!!!


何かが目の前を通り過ぎたと思ったら、目と鼻の先にあったオークションハウスの入り口に向かって突き進み

一瞬で吹き飛ばしたのが見え

それまで歩いていたチカは走ってオークションハウスへと飛び込みんだ



天竜人が踊ってるじゃないか・・・

天竜人がいるってことはマント外しとくかな・・・


マントを外し持っていたバックにつめ前に進む

前に進むと見えてきたのが憎悪に満ちた人々の目と、その真ん中にいる一人の魚人

血を流しながら自分の兄のことを必死で止める魚人だ

それを確認し、更に進む



カタン・・カタン・・カタン・・

階段を降り、天竜人を通り過ぎ魚人の下へと近づいた

周りの人間がざわついていることなど目にも入らず、ただただ階段を下りる

途中で自分の兄の怒りで血走った目と目があった

何も言わず頷くと兄も何も言わず魚人から手を離し階段を上がってくる

自分が魚人の下にたどり着いたのと兄が天竜人の下にたどり着いたのはほぼ同時



私は何も言わずしゃがみこみ魚人の傷口に手を当て打たれたであろう傷の手当てをする

自分の能力である風によって魚人の中にあった銃弾を取り出し

止血をして手を止めた



「・・おまえ・・・俺は魚人だぞ・・・。」

「見れば分かるよそんなの。」

「お前は人間だろ?何故俺を助ける。」

「見れば分かるでしょ。人間だけど、人を助けるのに理由なんて必要ないでしょ。」




一拍置いてチカは続けた




「うちの兄貴は真っ直ぐで馬鹿だけど、人を見る目だけは人一倍優れてんの。お兄ちゃんがあんだけ怒ってるってことは貴方は助けるべき人だ。それだけだよ、元太陽の海賊団ハチさん」


ハチの事を知っている事に本人は相当驚いたようで、目を見開いている

その後ろで耳障りな声が響いた



「この虫けらを殺すアマス!!!」


いつの間にか人々はいなくなっていて、超新星の船長三人がお目見えしていた

だが、今はそれどころではないのだ

せっかく潰しに来たっていうのに、目の前で人魚まで天竜人に殺されては寝覚めが悪いにも程がある

天竜人のすぐ傍に風となって現れ、チカは力の限り殴り、ふっとばす


次の瞬間奥の壁が崩壊したかと思うと次々に敵たちが倒れていく






「そんなところで何油売ってるんですか、レイさん。」

「いやいや、掛けに負けてしまってね・・。」




チカはいきなり壁を壊し登場したレイリーに突っ込みもいれず、呆れたように息を吐く

殴った天竜人がもぞもぞと動いて口を開いた




「海軍は・・・何を・・やってるアマス!」

「・・・ふっ・・・」



笑いが止まらない

チカは持っていたマントを取り出し、羽織ると



「私が海軍将校ですが、何か?」


ニヤリ

そう表現するのが妥当だと誰もが言うであろう笑いを天竜人にむけ、覇気で気絶させた












無事ケイミーという人魚の首輪も外し終わり、レイリーと少々会話を交わすと超新星の方に向き直って声を上げる



「キッド、ロー、兄ちゃん、今日は私手伝うよ。潰し損ねた上に完全に巻き込んだ形になっちゃってるしねぇ?」

「おぉーサンキューチカ!」

「てめぇ、その上着って事は海軍将校じゃねぇのか。」

「将校だけど?なんか文句でもある?」

「てめぇは海軍の癖してイカレた野郎だな。」

「イカレてて悪かったな!あんたも十分イカレてるよ、キャプテンキッド!」

「・・・違いない・・・。」



最後に続いたキャプテンキッドの所の副船長キラーの一言に吹きそうになりながら

羽織っていた上着を脱ぎバックへと戻して

マフラーは色だけ変えて巻きなおし顔が半分ほど隠れる

中途半端だけどこれで暴れてもなんとかばれないはずだ



「お前、そんなことしていいのか。」

「ばれなきゃ関係ないね!!!」


眉を寄せて問うローにセンゴクが言うところのあの血筋特有のニカリとした笑顔で答える

マフラーをしっかりと上げ出入り口に向かっていると

ボスッと頭に何かがかぶせられた


ローの帽子だ



「急にどうした?」

「さすがにマフラーだけだとアブねーぞ。いつばれるかわからねぇ、貸してやるから被っとけ。」


それを見ていたキッドが自分のトレードマークの一つであるゴーグルを「これもつけとけ」といって渡してきた


「サンキュー、今度あったら捕まえるついでに返すから。」



ゴーグルをつけ、帽子を目深に被って軽口を叩き笑う



「今回だけは、死ぬ気で守ってあげる。」



















それが私の正義であるかぎり



(二人が渡した帽子とゴーグルに他意が込められていたと気がつくにはまだ時間がかかる様で・・・)















===あとがき===

長ーっ!!!
お友達の驟雨のサイトの20000hit祝いに書いたワンピ小説ですが
リクエストが“シャボンディ諸島&お相手が超新星”とのことで
最初は普通に書いていたんですが何故か超大作に(笑)
しかも、オチがVSオチってww
こんなのでいいのか?
いや、だめだよねwww
結局ワンピシリーズの番外編みたいな感じになっちゃったけど、
驟雨、20000hitおめでとう!!!


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