ライン、3
「チカちゃん、日曜日だからミサに行こうか。」


久しぶりのお出掛けだ。

嬉しい。

ひとりぼっちの留守番はとても寂しくて悲しいから、外に出られることがどうしようもなく嬉しい。

最近はずっと外に出られなかった。

理由はと言えば私が彼、シロさんを怒らせたせい。

彼は嫉妬深い。特に私に関しては驚くほどの執着心を発揮しては私を閉じ込める。

それを知っているのに、私が彼以外の人物と10分以上話してしまったから彼は怒ったのだ。

そして例に漏れず私を閉じ込めた。

そういう時シロさんは河川敷の皆に私は旅行に行っていると言うらしい。

最近はだいたい4日程で解放されるのでちょうどいいのかも知れない。


「ミサまで余裕ないし早く行こう、シロさん。」


そう言って私が彼の袖を引けば彼は、そうだね、と返す。

閉じ込められることに慣れてしまったせいでどうも私は閉じ込められることの寂しさや怖さよりも外に出ることへの高揚感や嬉しさが勝るようになってしまった。

それはいいことではないのかもしれない。

けれど、私も彼もこんな不器用な愛し方しか知らないのだ。

歪んだ愛。それに馴染んだ不器用な愛し方は私たちのなかで何よりも澄んだ純粋な愛なのだ。


がちゃ、と音がして玄関の扉が開く。

玄関の白い石畳の上でシロさんを待っているとすぐにシロさんが出てきて、行こうか。と白線を引き始めた。




私が歩くのは彼の引いた線の上。

真っ白の線は家の外での唯一の私の過ごしていい空間だ。

もちろん私も彼も文句なんかない。




すたすたと歩き続けていると協会についてしまった。

もう少しだけ散歩を楽しみたかったなんていえないけど、少し残念。


そんなことを考えているとシスターの号令がかかった。

いつも通り5秒程で終わったミサ。

シスターが私に気がついて近づいてくる。


「おおチカ、帰って来たのか。多めに焼いておいて良かった。お前の分だ」

「いつもありがとうシスター」

「気にするな、毎週のことだ」


腕に痛みを感じる。

気がつけばシロさんが手首を握っていた。

きっと袖の下は赤くなってるだろうな。


村長やP子、鉄兄弟、ステラ、みんなに久しぶりに会うことができて嬉しい。

にこにこと笑って話しながらも腕をつかむ力は強くなるばかりで、痛みは鈍くしかし確実に私の頭を浸食していっている。

もうそろそろ限界かな、なんて考えているといつの間にかシスターの腕がこちらに伸ばされていた。


あと数センチで頭にふれる。

―ぱしん


咄嗟に叩き落としてしまったそれに私は驚いていた。


「―あ、ごめん、なさい、シスター...」

「...いや、気にすることはない。すまなかったな、チカ」

「大丈夫、です」


どうしてか触れられるのが無性にいやで咄嗟に手が出た。

前までは心地よく感じていたその大きな手を気がついたら拒否していた。

私には訳がわからない。

わからない、わからない、わからない。


「すみません、シスター、私帰ります、ね。」


気がつけば強く握られた腕は解放されていて、シロさんは少し遠くでリク君とお話ししていた。

私はシスターから貰ったクッキーを抱き締めながら白線の上をひたすらに家にむかって走る。

えたいの知れない恐怖から逃げるように。







ライン引きの転がる音に重なった「それでいい」という言葉は生憎私には届かなかった。





堕ちる
どこまでも堕ちていく思考に恐怖する



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シロさんをもっとヤンデレにしてみた←
でもこれはこれでシロさんも夢主ちゃんも幸せだからいいと思うの(持論)
夢主ちゃんはだんだん壊れてきてるけどね!
シロさんはかなりの策士だと思いますまる




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