「はよ。」
「あ、おはようございます東条さん。」
「それ、どうしたんだ?」
「それ?」
「それだよ、それ。」
「ん?マスクのことですか?」
「おう、風邪でも―」
―くちゅんっ―
東条の言葉を遮るように聞こえるくしゃみの音
「本当に風邪でも引いたか?」
「いえ、ちがうん―くしゅっ―です。」
「くしゃみ止まんねぇじゃねぇか。大丈夫か?」
そういや目も赤いしよ・・・と心配そうに見つめる
「そうじゃ―」
―なくて・・・と続くはずだった言葉は空に吸い込まれるようにして消えた
驚きすぎて言葉が出なくなってしまったのである
「ん・・・熱は無さそうだけどな・・・。」
ぴたりとくっついた自分と東条の額
段々と顔に熱が集まるのを感じ無理やり東条を押しやると
「た、只の花粉症ですから!!!」
真っ赤な林檎は花粉症