「トシ、いっちゃん、久しぶり。」


そういってチカは俺の肩をぽんっと叩いて座るのは俺の隣

にこりと笑うチカの笑顔があの頃と全く変わらなくてなんだか泣きたくなった


「マスター、昨日と同じのちょうだい。あ、同じのこっちの大きいのにもね。」


俺の前に出されたカクテルを一口飲むといかにもチカの好きそうな甘い酒


「おい、チカ昨日もココに来てたのか？」

「うん、せっかく江戸に来たから良いお店で良いお酒いっぱい飲んでいきたいと思って。ここのお酒美味しくて癖になっちゃったんだもん。」

「そうか。お前カルア・ミルクすきだもんな。」

「これ、カルア・ミルクじゃないんだよ？って、ちょっと待って!!ココのカクテルにマヨ入れないで!!!」



俺を挟んで座ったチカとトシがはなして、俺はそれに笑う

なんだか武州の頃とは全然違う場所で、何年もたってるのにあの頃にタイムスリップしたみたいだ





急に武州にいるチカから手紙が来たのが一週間前





いっちゃんへ



前略、いっちゃん、みんなは元気ですか？

私は元気です。

急な話なんだけど、江戸に旅行に行くことになりました。

一週間後、会いに行くから空けておいてね。

場所は歌舞伎町のBreaっていうバーだから9時にそこで。

それと、どんなに頼まれても総ちゃんは連れて来ちゃ駄目だからね？

総ちゃんはお酒飲んじゃ駄目な年なんだから。

でも、今の彼女さんとかいると思うから浮気と疑われないようにトシでも連れてきた方がいいかもね？







最後の一行を読んで胸が締め付けられた

俺がまだ武州に居た時、チカは俺の彼女だった

チカは美人で気立ても良くて、

年だってトシよりもチカの方が2つ下で俺のほうが大分上で

犯罪臭くて、手を握ったりキスをするのが精一杯だったのを覚えている


それでもチカが大好きだった

俺が大好きだって言うと大好きって返してくれたチカ

そんな幸せを壊したのは俺の方







「チカ、話さなきゃいけないことが―――」

「いっちゃん、空が青いねぇー。」

「･･････チカ、聞いてくれ。」

「･･･やだ。だって、だって！」

「チカっ、武州を出ることになったんだ。江戸に行く。」



チカは目に涙をためて、今にも泣き出しそうに俺を見つめて

俺はそれに耐え切れなくてチカから目を逸らし


「別れよう。」


その一言を告げた










「いっちゃん、いっちゃん？どうしたの、つまんなかった？」

「近藤さん、どうしたんだ？」

「いや、なんでもない。ちょっと昔のこと思い出してただけだ。」


どうやら回想していたら無口になっていたらしい

チカとトシに返事をして苦笑をした

そうしてチカとトシに話すように促すとチカが口を開く



「あたしね、好きな人がいるんだけどさ、」



チカの口から出たのは衝撃的な言葉だった

そりゃ、あの頃から何年もたっているのだからチカに好きな人が出来たって、彼氏が出来たって全く変なことではないのだけど

俺の中ではそうではなかったらしい

チカはいつまでも俺の事が好きで、俺の彼女でいるような気がしてた

俺だってこっちに来てからお妙さんを追いかけたりしているわけだから、そんな確証どこにも無いのに

そんな気がしてたんだ



「ずっと好きなんだけど、そろそろ踏ん切りつけないとお嫁に行きそびれちゃうし。諦めようかなーって。」



苦笑しながらトシが立ち上がって「便所いってくるわ。チカー頑張れよ。」と言いながら立ち去る

チカが大切な話をしてるのにトシがいなくなるなんてあまりない事で驚くがそれよりもトシがチカに言った言葉の方が気になった




「こっちにいる人なのか？」

「んー、あまぁ･･･ね？」



チカらしくない曖昧で煮え切らない答えに歯がゆさが残る

自分で聞いといてチカが好きな相手というのに嫉妬してイライラしてる自分に気づいて内心苦笑する



「踏ん切り、ついたのか？」



そう俺が聞くとチカは自分の頬を右手の人差し指でかいて「んー。」と唸る



「駄目だったみたい。会ったら隠してた気持ちがあふれ出して胸が壊れそうになっちゃって、諦められなかった。」




そういって俺を見つめるチカ

その瞳の中に宿る色には見覚えがあった

俺が、チカに別れを告げたあの日に見た色

心が疼くのを感じる

俺の思っていることが正しいなら―――




「だからね、その人を無理やりにでも振り向かせてお嫁さんに貰ってもらうことにした。」




ね？いいでしょ、いっちゃん？

チカが言った言葉に勝手に体が動く

すっぽりと俺の腕に入るチカの体はやっぱりあの時と全然変わらなくて

だけどあのときより何処か頼もしくなったチカに俺の心は捕まった









俺を捕らえたカウガール
「いっちゃんはあたしが幸せにしてあげるからね？」

「逆じゃん！俺が幸せにすんの！」

「だって、なんか頼りないんだもん！どうせ、また好きになったひとのストーカーでもずっとやってたんでしょ！」

「う゛････」

「あたし以上にいっちゃんを幸せに出来る人はいないんだから！」



いっちゃんとあたしがさっきから飲んでるお酒ね、カウボーイって言うカクテルなんだよ。

そう言って笑ったチカに俺は絶対にこの子には適わないと確信した。















＝＝＝あとがき＝＝＝

長らく更新をしていなくて申し訳ないです　oｒｚ
リア多忙すぎて・ﾟ(゜´Д｀゜)ﾟ・。
つか、なんだか長いなっΣ(・ω・ノ)ノ!
愛です←
最初はこんなに長くする気はなかったんですが（´-ω-｀；）
とにかく！ここまで読んでいただいてありがとうございました！


カクテルについてですが・・・
リキュールベースの牛乳とコーヒーのカクテルがカルア・ミルク
ウォッカベースの牛乳などを混ぜたカクテルがカウボーイです
お話はこれをイメージして書きました（*´ω｀*）