波の国3
「こういうことされると、我々としても困るんですよ。タズナさん?」
カカシは額宛で隠れている眉間に皺を寄せながらタズナに言う
完全に不機嫌だ
こんな状況のカカシを言い負かせるのは“マコト”“三代目”“四代目”ぐらいのものだろう
マコトと四代目はさて置いて、ここに三代目が入っているのは狸だからだ
なんともそういうことがうまいのだ
まぁ、亀の甲より年の功というぐらいだから、それもありえるのだけど
そんなわけで、絶賛不機嫌モードのカカシをタズナは計算ずくで打ち負かした
そのときにニヤリと笑ったタズナにマコトが
『こいつも狸かっ・・・!!!』
と思ったのは誰にも言えない
だが、こんな間にもナルトの手は血に染まっていっていて大変な事になっている
マコトはナルトに駆け寄り持っていた布を濡らして血を拭き、止血すると
兄を心配する一人の妹として心配そうな顔をしながら
「大丈夫?結構血が出ちゃったでしょ、ナル兄。」
「心配要らないってばよ!手当てありがとなっ、マコト。」
「そう?もうあんな無茶しちゃ駄目だからね?」
そういう顔をするマコトはいつにないくらい不安げで
彼女が暗部で働く姿を知っているカカシはおろか、つい最近あったばかりのタズナでさえ抱きしめたいと思ってしまう
カカシはこんなにもマコトが不安定な存在だとは思っていなかった
表ではいつも笑っていて、暗部の仕事をするときは全くの無表情になるマコト
確かに不思議ではあるが、ここまでナルトに執着するとは思っていなかった
危険な目にあったといっても、“死ぬ”という場面ではなかった
カカシが本気を出せば一人で瞬殺できた相手だったし、暗部で働いているマコトなら
それぐらいは分かっていただろう
だが
マコトはこんなにも不安げな顔を見せた
この子は、ナルトを失う事に対しての異常なまでの拒絶反応を示したのだ
兄に九尾が入っているのをこの子は知っているのだろう
この子にももう一匹の九尾が入っていると聞いた事がある
それを憎いとは思わないのか?
確かにナルトはこの子にとって兄妹、そして唯一の肉親である
しかしそれがここまでこの子を駆り立てるとはカカシはどうしても思えなかった
『この子は、何を抱えて生きている?』
『この子は何故そこまで失うことに執着する?』
それを考えたとき、カカシは守りたいと守らなければいけないと感じたのだった
それと同様の想いがサスケの心に駆け巡ったのも同じ瞬間で